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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年9月

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2015.9.27 サキの日記


 大概の人は、自分と同じグループの人しか人間扱いしないものなのかもしれない。おしゃべり女の集まりは、グループ外の子をまるで意思のないゴミのように迫害し、それが人を傷つけ、自分たちが恨まれる原因になることには全く気づいていない。オレ様勘違い男子は、周りの冷ややかな目に気がつかない。作り笑いとその場しのぎで流されているだけで、誰にも好かれてもいなければ尊敬もされていないのに、何故か自分が一番偉いと思い込んでいる。



 人一人の価値が、今とても安くなっているように思う。少子化で労働力が不足しているとか言ってる割には、実際働いている人が大事にされていないらしい。ホームレス、ネットカフェ難民、貧困で餓死する事例まで出てきている。しかも、少し前までちゃんと働いていた人が、だ。






 たとえ世の中が良くなったと仮定しても、私がましな人間になるとは思えない。

 生まれた瞬間からこういう人間だったから。


 最近は特別に調子が悪い…と言いたいところだけど、私は元からそうなのだ。回りの人がどうして、あんなに色々なことを絶え間なく毎日毎日こなすことができるのか、不思議でしょうがない。

 今日は起き上がる気力もない。歯を磨く気力すらない。

 カーテンだけ腕を伸ばして引っ張ってみた。眩しいので布団に潜った。我ながら何をしてるんだかさっぱりわからない。



 買ってきた洋書を少し読んで、寝て、コーヒー飲んで、読んで、寝て。



 何のために生きてるんだかわからない。救いなのは、なんとなく選んだ本が面白かったことくらい。

 英語だけど舞台はインド、主人公は家電製品を売る店の店員で、女の子。

 子供を搾取する工場を告発したせいで強盗に襲われてレイプされそうになったり、女の子は父が夫に渡す『所有物』『財産の一部』でしかない村があったり……インドだから起こる理不尽が次々でてくる。まあ、あとでそのほとんどか仕組まれていたとわかるんだけど。

 だけど、普段の生活で考えていることは、日本の私とあまり変わらない。弱いものいじめが許せなかったり、身勝手な姉妹に怒ったり、テレビのニュースが悪いことばかりで憂鬱になったり、困った客が来たり、上司の命令がメチャクチャだったり……。


 程度の軽さ重さは違うけど、日本でも同じことが起きてると思う。

 インドで強盗、リンチ、レイプとして行動に現れるものが、日本では陰湿な嫌がらせとして出ているだけなのではないか。オレオレ詐欺、いじめ、陰口、中傷、セクハラ、ネット上の女性を貶めて侮辱するような書き込み。家庭内暴力、ねちねちとした言葉による嫌がらせ。



 日本はだいぶ古代から、庶民の間にも言葉や文字が広まっていて、なおかつ『忌み言葉』『建前』『禁止ワード』が多い。

 他の言語に比べて人を罵倒する言葉が少ないぶん、遠回しに、当たり障りのない言葉でちくちくと相手を刺すやり方が、もう何代にもわたって定着しているのだろう。




 そんなこといくら考えても、

 私の人生はよくならない。

 わかっているけど、いつも余計なことにだけは頭が回るから困る。

 勝手に気づくのだ。

 余計なことばかりに。





 本を読み進めていたら、秋倉のレストランで働いていたヨギナミを思い出した。学校が終わってからバイト、しかも接客。




 私は?



 将来、ちゃんと働く能力が自分にあるとは、とても思えない。



 寝よう。

 でも昼間寝てたから眠れない。

 眠っている間だけは平和なのに。




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