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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年4月

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2016.4.16 土曜日 サキの日記

 佐加、あかねと一緒に町のゲーセンに行った。マンボーという名前のパチンコ店で、思ったよりも新しくて、田舎の景色の中では悪目立ちするほどギラギラした照明がついていた。昼間でもその光りすぎ感が想像できるくらいだ。もっと古臭い建物を想像していた私は、パチンコ店に入るのになぜか緊張してしまった。なんとなく不良が行くところだと思っていたのに、中に入って騒がしいパチンコフロアを通過したら、ゲームコーナは小学生だらけだった。あ!佐加だ!とその中の何人かがこっちを見て言った。ゲームはほとんど景品を釣るタイプのもので、東京で見かけたものとあまり変わらなかった。ただ、パンチングマシーンみたいなゲームだけは、殴る部分に大きなひび割れがあって、あと一発本気で殴ったら壊れてしまいそうだった。

 昨日は景品の数で勝負しようと言っていたのに、佐加はリズムゲームがしたくなったらしい。とにかく動きたくてうずうずしているみたいに見えた。やたら上手で、大差で負けた。暇で似たようなゲームをしていた私は自信を打ち砕かれた。数少ない得意分野に侵攻されましたとか自分でもわけのわからないことをつぶやいて肩で息をしていたら、佐加に爆笑されて背中を思いっきり叩かれてむせた。私たちが勝負をしている間、あかねはゲームのキャラクターグッズを熱心に釣っていた。どこに行っても単独行動するみたい、あかねは。


 ヨギナミも連れてきたかったんだけどバイトだしさあ、ヨギナミって変なとこ真面目で、私に『パチンコ屋に出入りするのは良くないよ』って真面目に注意するんだよね~。


 佐加が言った。なんとなく寂しそうな感じだったが、すぐに気持ちを切り替えて本領を発揮し始めた。

 佐加の才能はリズムとノリだけではない。

 いや、ある意味ノリなのか。

 パチンココーナーに行って、景品を交換しようとしているおっさんに近づいて『あれちょうだい!』『これうまいんだよね』と言って、欲しいお菓子をもらい始めた。

 私はびっくりしたけど、あかねはニヤニヤして黙ってたからいつものことなんだろう。あのおじさん知り合いなの?と聞いたら、佐加は『ここに来る秋倉のおっさんはだいたい顔見知り』と言って、私にポッキーをくれた。あかねには小さな香水瓶を渡し、残りはヨギナミんとこに持っていくと言ってリュックにしまいこんだ。佐加にお菓子を巻き上げられたおじさんたちは、みんな機嫌が良さそうだった。佐加が女子高生だからか、本当に知り合いの女の子だからかわいがっているのか、実は下心があったりしないのか、私は今思い出して考え込んでしまっている。佐加って、東京とか都会に生まれてたら、男からブランド物を回収するお姉さんとかになっていたんじゃないだろうか。

 帰りに研究所に行こうかと思ったけど、あんまり毎日行くのもどうかと思ってやめた。

 部屋で一人になってから、友達と楽しく過ごすのは本当に久しぶりだと気づいた。リオを除いて。リオを思い出したのでブログを見たら、どっかの観光地の露天風呂の画像があった。またどこかのパパと一緒なのだろうか。

 うちのバカからは毎日『パパピョーン』という題名のメールが来るが、無視。

 母から『別なドラマに端役で出ることになった』と来たからやっと脱・妙子するのかと思ったら、夏のホラー特集だった。見る前から怖い。というか、妙子のイメージがある人は母を見ただけで爆笑しちゃって怖くも涼しくもなれないと思う。



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