2016.4.14 木曜日 研究所
頭痛なんて嘘だ。しかし、頭痛より頭の痛い問題が久方を襲っていた。早紀のクラスメートと別人がまた接触した。きっとあの二人は早紀に別人に会った話をしてしまっただろう。それもあくまで『久方創』の話として。自分には何をしていたか全く記憶がないのに。
本来なら楽しみな早紀の訪問が、今日は怖かった。早紀は三時半ごろにやって来て、6時間連続授業は辛いとぼやいた。
丸一日ボーっとしているようなものです。考え事には良いかもしれません。当てられなければ。でも別の問題と同時にあまり深いことは考えられませんね。日本に考える人が少ないって書いてる哲学者がいましたが、あれ、学校の授業が長すぎるか受け身すぎるからっていうのもあるんじゃないですか。授業終わったのにまだ体が固まってる感じがします。体に良くないです。
早紀は授業について自論を述べた後、
保坂と何かあったんですか。
と聞いてきた。久方は正直に覚えていないと言った。保坂君は何か言ってた?と探りを入れてみたら、
困ってるところを助けてもらったと言ってましたけど。
早紀はそれしか言わなかった。何かに気づいたのか、それとも何も知らないのか。
久方は落ち着かなかった。まだ頭痛がするのかと聞かれたので、良い言い訳ができたと思って話を終わろうとしたら、
あ~!所長!あ!サキもいるじゃん!!
窓から悪魔、いや、佐加美月が現れた。久方は早紀のマグカップを奪って窓に向かって投げつけ……るところを想像した。その間に早紀は窓を開けてしまった。佐加はなんと、窓から中に入ってきた。
所長さ~一緒にゲーセン行かね?町のおっさんにも会えるしさ~。ここにばっかいないで外出ようぜ~!!
気軽に言ってくれちゃって……久方は何も言わずに少しずつ後退し、気が付いたら廊下にいた。早紀が『昨日から頭痛がするって』と話しているのが聞こえた。それを合図に2階に駆け上がり、日が落ちてから人の気配がなくなったのを助手に確認してもらうまで、久方は部屋から一歩も出なかった。




