2016.4.9 土曜日 サキの日記
雪もほとんどなくなった。新芽が育ってきてるから見に行こうと、所長の好きな外歩きに誘われてついていった。道はあちこちでぬかるんでいた。平岸家で長靴を借りてくるんだったと思った。長めのブーツを履いていて本当に良かった。所長が言うように、枝の新芽は三月よりもはっきりと成長が見えて、エネルギーが有り余っていて、早く大きくなりたくて仕方ないというふうに見えた。日差しが強かったからいつも以上に輝いて、そんなふうに見えてしまったのかもしれない。写真を撮ったり、じーっと眺めたり、取れたら大変だからさわらないようにと私に注意したり、そんな所長を観察するのが面白かった。
春ってね、大人にとっては悲しい季節なんだよ。
うれしそうな様子の所長の口からそんな言葉が出た。
若いうちはわからなくていいけどね。
自分はもう若くないみたいな言い方だ。所長今いくつですか?まだ二十代後半くらいでしょ?と言ってみた。所長はもう別な草に夢中になっていて、私に話しかけたことを忘れたようだった。




