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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年4月

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2016.4.7 木曜日 サキの日記

 始業式。もう行かないと思っていた学校にまた行く。場所は違うけど。

 冬に会った男の子が教室にいて、彼氏いるの彼氏!?と勢いよく聞かれた。いないと言ったら、へー、と、嬉しくもなさそうな愛想笑いになった。名前は奈良崎といって、親父は何でも修理する剛毛として有名だよと言われた。修理はともかく剛毛って何だろう。メガネの茶髪が保坂、大柄でごつい男子が藤木、ヨギナミと一緒に来た長い茶髪の子は佐加美月という語呂の良い名前を持っていた。先生が来てから全員が自己紹介したけれど、高谷が、


 新橋さんと同じアパートに住んでまーす!


 とふざけた声で言ったのにはむかついた。反応して一瞬笑ったのは高条だけだった。高条というのはあの松井カフェのオーナーの孫だ。あかねが言っていた通り、このクラスの男子の中ではイケメン寄り。だけど、無表情で話し方も不愛想だ。ちょっと怖い。このクラスは既にグループ分けが決まっていて、私は高条、高谷の新しく来たメンバーと、あかねの四人で『第三グループ』に入れられてしまった。高谷が一緒っていうのも嫌だけど、あかねが今までどこにも属さずに一人でこのクラスにいたというのが気になった。第一グループは杉浦(学級委員長で、ちょっと変な話し方をする)、ヨギナミ、佐加、藤木。第二グループは伊藤、保坂、スマコン、奈良崎。それぞれのグループが仲良しで、第二グループはプライベートでも外でバーベキューしたりしているとあかねが教えてくれた。去年の夏に見かけたのもそういえば第二グループの四人組だ。

 このクラスではみんな名字で呼び合うように言われているが、ヨギナミとスマコンはなぜかフルネームで呼ばれていて、あかねと佐加は初めから私をサキと呼んだ。ヨギナミもなんとなくそれに流されたようだ。ほかの人には『新橋さん』と呼ばれることになった。


 サキってさ~、研究所の所長と仲良い?


 佐加が普通に聞いてきた。誤解されては困るので、本の話をする友達と答えた。でも、所長と私の関係って何なんだろう?友達でいいんだろうか。本という単語を聞いて杉浦が何か言いながら近寄ってきたが、藤木につかまれてどこかに連れていかれてた。伊藤さんはみんなに『伊藤ちゃん』と呼ばれていて、ずっとスマコンとだけ話をしていて、今日は私に近づいてこなかった。

 ヨギナミと佐加はよく研究所に行って所長と話すらしい。今日も行ってみようぜ~という佐加の提案で、四人(ヨギナミと、いつのまにかあかねが加わった)で行った。所長はなんだか気まずそうな顔をしていた。それでもコーヒーとビスケットを出してくれて、佐加とあかねがものすごい勢いでしゃべるのを、ヨギナミと私と所長が黙って聞いている感じ。

 明日は一人で来ようと思った。世間話も楽しいけど、私が所長としたいのはそういう話じゃない。

 佐加は藤木と二人で、隣町から通学しているそうだ。伊藤ちゃんはとなりの村から、あとはみんな町内の人だそうだ。

 バスの時間になったと佐加が言ったので、四時ごろに帰った。

 しゃべるの苦手だから、佐加たちとうまくやっていけるか心配。だけど、みんな悪い子ではなさそう。先生も『前の学校の連中とうちの連中を同じ目で見ないように』とか言っていたではないか。きっと大丈夫。



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