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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年3月

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2016.3.3 サキの日記


 昔のマナーブックを読んでたら、謎なことがたくさん書いてあった。ワインのテイスティングは男性がするものだから男が一緒にいたらそいつにさせろとか(毒味って意味かもしれないけど、気に入らない)コーヒーは香りや味をみるために最初の一口はブラックで飲めとか(やってる人を見たことがない。私は常にブラックだけど)ワープロ(?)で文章を書くとき、相手の名前や会社名が改行で2行になると『名折れる』『身を割る』で良くないから1行にしろとか(気をつけよう……)。


 マナーって時代で変わるみたいだ。おばあちゃんが前に言っていた。昔は男性と話すときは、相手が先生でも、ドアを開けておけと指導されたと。中でいかがわしいことをされないように。


 それは、今こそ、やったほうがいいんじゃないだろうか。

 ポルノと現実の区別がつかない男子から身を守るために。


 本屋を歩いて雑誌の前を通ると、やたらにセックスとか、モテなんとかって表紙がある。

 セックスをしたことがなくても(ていうか、別にしたくなくても)経験があるふりをしないといけないような気分にさせられることがある。でも、アンケート調査はみんな嘘をついてると言う人もいる。カントクだけど。



 女が処女じゃなきゃいけなかった時代には、実際に経験があっても『ありません』と答えたもの。今は逆なのヨ。経験があるほうがかっこいいことになってるからみんな『ある』にマルつけるだけ。見栄で。実際生活してる人をよく観察したら、そんな暇も気力も会話力も人脈もないわよ、みんな。女を口説く能力があったら婚活パーティなんかいらないでしョ?



 カントクはそういうことにすごく厳しい。私も昔からよく言われてた。みんな寝てると言われてもそれは相手がヤりたいだけの嘘だからねと。なんのことかわかったのはつい最近だけど。


 でも、私が知りたいのはそういうことじゃない。

 もっと哲学的というか、人生をどうするかって問題の方。

 なんか、女の子に産まれると、

 自分は全く興味のないどうでもいいことを話題にしなきゃいけないことが多くて、疲れる。


 恋愛もセックスも手作りも料理もスイーツも興味ない。

 本と音楽と動画とネット(最近控えてる)と哲学と考え事。

 どう考えてもそっちのほうが大事。



 でも、ほとんどの女の子は、

 私のほうが変だと言うのだろう。

 ほんとかどうかもわからない恋の話をして、

 スイーツを食べながら。


 嫌だなあ。

 この先ずっとこうなんだろうか。

 秋倉高校でも大学(行けるかわからない)でも職場でもママ友とかでも(子供なんて欲しくないし、自分が親に向いてるとは思えない)。


 せっかくの真夜中、ほんとなら哲学的思考に使ってもいい時間を、私は『女の子は損』というフレーズをもてあそぶことに費やしてしまった。


 だって変じゃないか。

 結局『女子力』なんて、

『女の子らしい』と世間が叫ぶことを真似てるだけ。

 ありもしない『男らしさ』を振り回すバカ男子にしてもそう。

 まわりの価値観に振り回されてるだけ。


 自分が本当にどんな人間か、

 実は誰も知らないのかもしれない。

 知ってしまうと、

 社会と衝突しなくてはならなくなるから、

 わざと知らないふりをしているのかもしれない。


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