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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年3月

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2016.3.2 ヨギナミの家


 ヨギナミがバイトから帰ると、部屋にはまだおっさんがいた。

 ざぶとんを枕にして、床で眠っていた。声をかけても、起きない。眠っている顔は小さな子供のようだ。いつもの荒っぽい言動は、この寝姿からは想像もできない。



 ほっときなさいよ。

 怒鳴り疲れて寝ちゃったんだから。



 母はつまらなさそうな顔でテレビを見ていて、ヨギナミには目もくれない。かなり長い時間、言い争ったようだ。どうしたものか迷ったが、今日は宿題がたくさん出ていることを思い出し、キッチンの机に向かった。得意な数学を先に片付け、他に手をつけようか迷っていたら、誰がが玄関のドアを乱暴に叩いた。



 久方来てる?



 あの、金髪の助手だった。夜中に見るといつも以上に威圧的だ。寝てるから静かにしてと言うと、中に遠慮なく入ってきて、床で寝てるおっさんを見るなり、



 このクソガキが。



 と低く呟いた。

 母が嫌そうな顔でこちらを見た。『なんでこんな奴を家に入れるのよ?』と非難されたように、ヨギナミは感じた。

 助手は眠ってるおっさんを担ぎ上げると、久方のコートある?とヨギナミに聞いた。ヨギナミはあたりを見回したが、見当たらなかった。



 これでしょ?



 母が乱暴にコートを投げつけてきた。助手はそれを受けとると、挨拶もせずに出ていってしまった。もちろん『おっさん』を抱えて。



何なのあの失礼な男!?



 母がヨギナミに向かって怒鳴った。



 この町の連中はみんな私をバカにしてるわね!!



 バカにされるようなことばかりするからだろう、ヨギナミはそう言いたかったのだが、黙っていた。スマコンの占いを思い出したから。

『迷い子の独り言、気にするな』

 母は一通り町内の誰かの悪口を言ったあと、乱暴にテレビとライトを消して寝てしまった。

 ヨギナミは宿題に戻ったがなかなか集中できず、夕方に来て怒鳴っていたおっさんと、さっき助手が『久方』と呼んでいた人物の関連を思って悩んでいた。おっさんは何をしに来たのか。前に言っていた通りなら、おとなしい方の久方も後ろにいたことになるのだが、母との怒鳴り合いは聞こえていたのだろうか。




 無事に帰ってきたの見てほんとは安心したんじゃね?

 ヨギママが楽しそうにお土産出したからキレたんじゃね?

 自分は心配してたのにさー。

 保坂のクソオヤジよりおっさんのほうが、

 あたしはいいと思うけどなー。

 でも所長的にまずいよね。



 佐加は帰りにそう言っていた。母とおっさんをくっつけたくて仕方ないらしい。所長的にどうなのかはヨギナミも聞いてみたかったが、一番いいのはあの母が『誰とも付き合わないこと』だ。だから複雑な気持ちでいた。おっさんのほうがいい人なのはわかるが、だからといって母と恋愛はしてほしくない。遊ぶのはもっと駄目だ。


 思い悩んでいたので、宿題は遅々として進まず、

 やっと終わって寝た頃には、2時を過ぎていた。


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