2016.2.26 サキの日記
せっかく北海道に行くから、何か関係ある本読もう、そう思って見つけたのが、『北海道人―松浦武四郎』という本。蝦夷地と呼ばれていた場所に『北海道』という名前をつけた人。伊勢に生まれ、若い頃から旅をし、このままではロシアに取られるとの懸念から蝦夷地に渡り、アイヌ・モシリ(人間の土地、という意味)を歩き回り、水戸の老公に会いに行く。松前藩の守りは軟弱で、賄賂で腐敗し、婦女子への暴行は日常茶飯事、アイヌ人の処刑の仕方は、昔の中国やイスラム過激派を思わせる残酷さ。なんか、本州の中でも特別に下劣な人が集まったんじゃないかと思うくらい、ひどい。今住んでいる人はたぶん、誰も知らないだろうけど。
松浦は、松前藩には、ロシアやアメリカから蝦夷地を守りきれないと判断した。『藩主が発狂している』という情報まで、後で出てきてしまったから。そういう内実を本に書いたせいで松前藩に刺客を送られ、松浦は住まいを転々とするはめになった。
水戸で、正志斎という攘夷論の……なんていうかな、偉い人に会う場面がある。そこで言われる。
ロシアやイギリスの怖さは武力でも整った制度でもない。
キリスト教だ。
武力が通じなければ、宗教で民心を掌握する。
それは日本が古来から取ってきた方法でもある。
精神的なよりどころを失った国は滅ぶ。
ふと読むのをやめてニュースを見ると、イスラム過激派の脅威とか、逆にキリスト教を脅威に感じているイスラムの国。
やっぱり女性は悲惨な目に遭い、
たぶん組織は同じように腐敗しているだろう。
世界は、変わっていないのだ。
知らないアドレスからメール来てて、なんか軽い文体だから迷惑メールかと思ったら、
高谷修平です。
4月から秋倉高校で一緒の。
行く前に東京で会えない?
俺がおごるから。
いきなり何だ、ナンパか。
メアド誰に聞いたか訪ねたら、やっぱり平岸あかねだった。高条って男子からメールが来たけどそっちは?と書いてあったけど、来てない。男子と二人で会うのは気が進まないから、断った。
いいよ別に。
どうせ平岸アパートで隣の部屋だしね。
よろしく。
私はすぐあかねに電話で文句を言い、部屋を離れた別のアパートに変えられないか平岸パパにも聞いたが、だめだった。ナンパ男子が隣なんて嫌すぎる。何か起きたらどう責任取るつもりなんだ。
高条というのは、あの猫がいるカフェの孫だそうだ。あかねはさっそく作品の構想を妄想しているらしい。
だって家がカフェで、真面目なイケメンなのヨ?
秋倉では珍しい無愛想な美形なのよ?
妄想しないほうが無理というものだワ……ウフフフフ。
憐れなる次の犠牲者・イケメンからのメールを待っているのだが、来ない。たぶんさっきのナンパ男子よりは真面目なんだろう。
あかねは私にも二人のメアドを送りつけてきたけど、こっちから出す気はしない。
なんとなく、怖いし。




