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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年2月

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2016.2.20 サキの日記



 リオの誘いで、おいしいと評判のパン屋さんに行って、本当に美味すぎるチーズパン(正式名称忘れた。もちもちしてて、中のチーズが大量)を発見。他にもマロンマフィンとか、好きな紅茶クッキーを取った。

 コーヒーと一緒にいただきながら考えた。パン屋さんでは500円くらい使ってしまうのに、コンビニのパンでは120円でも買おうかどうか迷うのはなぜか。単に私がケチだからではない。パン屋さんのパンは、おなじ『パン』でもコンビニやスーパーとは違うのだ。たとえ、両方とも実は工場から運ばれているのだとしても。


 ちょうどイベント向けにラッピングされたクッキーやパンが、普通より高めの値段で並んでて、しかもみんなそれを喜んで買っていく。

 店の名前やブランド、パッケージが与える影響を感じる。人間だってそう。いくら見た目より中身とわかっていても、ファッションに無関心ではいられないし、服装、顔、肩書き、立派な持ち物、キラキラしたアクセサリー……影響されずに暮らすのは不可能だ。



 私の目の前には、ダイヤの輝きを体現したかのような美女がいて、キラキラの指輪とブレスレットを光らせながら、なぜか黒豆よもぎパンを食べていた。健康のためなのか、単に好きなだけなのかはわからない。



 ねえねえ、真面目なこと考えてたんだけど、聞いてくれる?



 リオが、かわいらしく首を傾げて尋ねてきた。たまにこういう前置きで意見を言う。そんなことしなくても、私はリオが知的な子だって知ってるのに。

 でも、世の中にはそんなこともわかんない奴がたくさんいるんだろう。(確かに、作文が苦手で、全身ブランド物の、パパつきのキラキラ美人が、実は哲学や古典文学はほぼ読破してるとはあまり思わないだろうけど)



 レシピって、釣り広告みたいだと思わない?

 食材を買わせるための。しかも、レパートリー増やさなきゃ!って思ってる私みたいのは、格好の獲物なの。

 テレビにもブログにも雑誌にもラジオにも、フリーペーパーにもレシピが載ってる。作りたくなったら材料をみんな買うじゃない。今日はこれ、っていつもの定番が決まってても、新しい食材のレシピ見たらつい余計な調味料とか買っちゃって、しかもそれ、そのレシピ以外で使わなかったとか、あるじゃない。



 私は、キッチンの下にある、衝動買いしたけど使わないまま放置してある豆板醤を思い出した。賞味期限チェックしたほうがいいかもしれない。



 レシピって情報だし、それ自体は役に立つものだけど、余計なものを買っちゃう原因にもなってると思う。

 ほんとは、そんなにたくさんの種類のものを食べる必要ないんだよね。基本のご飯と味噌汁をしっかりと押さえて……なんか、レパートリーがたくさんないといけないとみんな思い込みすぎなんじゃないかな。たくさんの種類の料理を作れるのが優れた主婦……ってわけじゃないと思う。確かに新しいものが作れたら嬉しいけど、本当に大事なのは、基本的な健康なものを毎日ちゃんと食べることだし、それができてんのに『レパートリー少ない』って言うのは余計なお世話だよね。



 リオは最近、精進料理に興味がわいたらしい。どっかのお寺に行くから一緒にどう?と言われた。私は肉食なので断り、リオが帰ってから、例の豆板醤を処分した。期限切れてたし、私が中華料理を作ることはめったにないし。


 夜、クックパッドを見たり、料理家のブログを見たりした。同じページでさりげなく、食材や、レシピ本が売られているのも見た。ガス会社のホームページにレシピがあって、中には料理教室まで開いてる会社もある。


 人にものを売る一番の方法は、

 生活に欠かせない衣食住に、さりげなく入り込むことなのかもしれない。


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