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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年2月

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2016.2.17 松井カフェ



 警察まで来てよぉ、さんざん大騒ぎしてまたどっか行っちまったのよ、あのバカぁ。



 カウンターで、奈良のとっつぁんが、コーヒー片手に呆れた顔をしていた。隣にはクッキーをつまんでいる平岸パパ。そのまた隣には、発光する頭をものすごい目で凝視している高条勇気。



 このハゲは事件だ!!



 光輝く珍事を金儲けに使えないか考えている孫に、祖母のマスターは気づいていない。ひたすら保坂に呆れ、真面目な息子が心配である。しばらく奈良崎家に泊まるそうだ。



 なんも、秀は真面目だから、皿洗いも風呂洗いも作業場のアシスタントもやってくれんのよ。俺とエリカは大喜びだべ。保は『剛毛とエリカを甘やかすな、つけあがるぞ』と、俺より物言いがジジイくせぇのよ。でも気を使ってんだろうなぁ。いつもは絶対手伝わねぇのに、秀がいるときだけは一緒に掃除すんだ、自称イケメンも。いやぁ、成長してんだなあ、でも、かわいそうだなぁ。



 保坂の母親は、現在ゲートを閉じており、誰も家に入れないらしい。仕事には行っているようだという。父親は車で走り去ったまま、連絡が取れていない。

 与儀あさみがまだ帰っていないことを、とっつぁんは息子に聞いていたが、黙っていた。変な噂になっては困るし、いくらあの保坂でも……学生時代からの付き合いで、どこか冷酷なところがあると気づいてはいるが……事件になるようなことはしないとは思うのだが。



 おお!!ちょうどよかったべ!



 とっつぁんはいきなり立ち上がったかと思うと、入ってきた客に寄っていった。眠っていたねこが急に起き上がり、毛を総立たせた。勇気はスマホで動画撮影を始めた。事件を期待しながら。



 パチンコいくべパチンコ!!



 とっつぁんは店に入ろうとしていた小さなおっさんを無理矢理外に押しだし、『こないだの続きだべ!』とはりきっていた。昨日いろいろあったから、パーッと遊びたい気分なのだろう。

 ねこが飛びかかるのと、ドアが閉まるのが、ほぼ同時だった。

 ねこはドアに貼りつくと、そのままズルズルと、爪でひっかくように床に落ちた。

 間もなく、車が走り去る音がした。哀れなおっさんはマンボーに拉致されたようだ。

 ねこは、店の客が自分を凝視しているのに気づくと、急にツンとすました顔で、ゆっくりと窓辺の定位置に戻り、いつも通り丸まった。でもどこか気まずそうだ。



 見てこれ!!



 勇気はさっそく撮影した『客に飛びかかってドアに当たるねこ』の動画を平岸パパと祖母に見せた。パパは爆笑して『その動画母さんに見せたいからくれ』と言い、祖母は、窓辺のねこが孫を殺気のこもった目でロックオンしていることに気がついた。


『孫に襲いかかるねこ』が見れる日も近いかもしれない。


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