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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年2月

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2016.2.15 サキの日記


 バレンタイン、

 おお、聖バレンタインよ。

 余計なことしやがって。



 おかげで、全世界が毎年心を痛めてる。いや、正確に言おう。彼氏もいないし恋愛にも興味ないし、しかも自分チョコにもなんか乗れない私が困ってるのだ。

 しかも、いつも帰ってこないバカが、この日はわざとらしく帰ってきて、3歩歩くたびに私をちらっと見るんである。まるで『物乞いをしようか、襲って金品を奪おうか』考えている浮浪者のようだ。私は絶対にあげないと決意して、スマホでドラマの公式ページの、イっちゃった目で温泉から顔を出してる妙子の写真を凝視していた。魔除け効果を期待しながら。



 うちには、ひとかけらのチョコもない。

 なかった。

 私がバカのうろつき攻撃に負けて、コンビニに買いに行くまでは。



 バカは意気揚々と、チョコを受け取ってすぐに、スキップしながら出かけていった。

 こんな強行手段で奪い取って何が嬉しいんだろうか。

 100%心こもってないのに。

(『早く消えろオーラ』が詰まってるし)

 全然わかんない。

 しかも今年も負けた!!




 カントクあてにはチロルチョコ爆弾(軽いボール2個にチロル入れまくって導火線に見えるロープ挟んで重ね、テープ厳重に巻いてデコストーン貼りまくり)、所長にはリオの特製チョコポット君を送った。本物のポット君がほっぺた染めてる写真が返ってきた。

 所長って本当に彼女いないのかな。

 私より余分に生きてる10年の間に、一人くらい好きな子はいなかったのか。



 畠山が好きだと思ってたこともあった。

 あいつも本気だと思ってた。

 でもそれは間違ってた。

 ただの俺様最教だった。

 漫画みたいな恋愛なんてこの世にはない。



 思い出したら怖くなってきたので、出かけた。考えごとしながらふらふらと地下鉄に乗った。どこをどう歩いたかは覚えてない。

 地下通路の階段に座って、どこかに行く、または帰る人を眺めていた。立ち止まらずに歩いているから、みんな行くところか、帰るところがあるのだろう。


 私にはどちらもない。

 そんな気が急にした。

 動けなくなった。

 何か、つかまなければいけない考えを取り逃がした気がする。

 でも何だろう?



 気がついたら、何時間も経っていた。体験したことがないくらい寒くなっていた。通行人も少なくなっている。

 誰も座り込んでいる私に気づかない。



 サキ君?



 無意識に、所長に電話してしまっていた。私は自分でも訳のわからないことを話してたと思う。階段に座りこんでるのに誰も注意しないなんておかしいとか。誰も自分に興味がないなんて寂しいとか。

 一番変なのは、こんなとこで、

 遠くの人に迷惑電話してる私だ。

 しかも夜に。


 所長は、もう遅いからいったん帰ってからかけ直してと言った。私は言われた通りにうちに戻ってからまた所長にかけた。少し話しただけで、すぐに、もう遅いから寝た方がいいよということになった。


 でも、眠れないから日記書いてる。






 聖バレンタインめ。

 何人ハートブロークンすれば満足するんだ。

 あんたのせいで、

 余計なことまで思い出す。


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