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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2016年2月

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2016.2.8 サキの日記


 リオに歩き方教室に誘われた。体験だけ。みんなで横一列に並んで、向かいの鏡で自分をチェックしながら歩く。社会人が多くてみんなオフィスっぽいちゃんとした服着てたのに、私だけめっちゃカジュアル。歩く姿もぎこちない。両隣が綺麗な受付みたいな人だったからよけいに私の間抜けさが強調され、自分一人だけがダサい世界の住人のように思える。

 リオはマリリン・モンローの信奉者で、私がマリリンはリルケの詞をドイツ語で読んだり、骨格を専門書で学ぶ才女だったよねと言ったらすごく感激してた。



 こないだ行った店で、女の子二人組が派手なだけのドレス見て『マリリン・モンローみたいになっちゃうからやめよう』って言ってたの!!あんたにマリリンの何がわかるの!?ファッション好きなら勉強しろよこのバカ!



 どうやら、自分を侮辱された気がしたらしい。

 私はファッションには詳しくないけど映画は好きなので、女優のことはよく知ってる。リオはカトリーヌ・ドヌーヴも好きらしい。カトリーヌは誰もが素敵と言うのにマリリンはなぜ貶められているのか。知性はどちらもあったのに。そんな話を2時間くらいしていた。女性の性的なイメージとか、愛嬌、フェミニンなものが、社会では子供っぽい、あるいは一段低いものとして(女性自身からも)軽視されていて、それが女性差別の根本にあるのではないだろうか。

 リオは現代のマリリン、日本のカトリーヌ。

 私が勝手に思ってるだけ。

 茨木のり子という詩人が

『自分の感受性くらい自分で守れ』

 とわざわざ言うのは、それが難しいから、簡単に投げ出す人が多すぎるからだ。特に女子。

 少なくとも、リオは諦めていない。



 所長は雪かき疲れがピークに達しているらしい。むこうから電話してきて、疲れた声で、助手が手伝ってくれないとか、昼間の記憶があんまりないとか、夕焼けが雪に映ると綺麗だとか、木の根本に凍った花を発見したとか話す。なんだか遠いお伽噺のようだけど、私は所長が住んでいる町に噂好きが多いことも知っている。



 4月が楽しみだけど、少し心配。


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