2016.2.7 サキの日記
昼間何をしていても、夜になるとやっぱり頭は勝手にいろんな言葉を紡ぎ出す。
これから何をしようか。
そもそもできることなんてあったっけ?
質問や答え、とりとめのない思いつき、そんなのが、いろんな感情と一緒に押し寄せてきて……私はその波のうねりを確かに感じているのに、顔は無表情のまま、防波堤のように動かずに、横たわったままじっとしていた。
全ては行き過ぎて、何も残らない。
わかっていたけど、それでも私は眠れないまま、バラバラになった思考を頭の中で探し歩いていた。
波が去ったあと、砂浜で貝殻を探す人みたいに。
いつの間にか、
私は、知らない場所を歩いていた。
夜の闇を照らす、繁華街らしき明かり、
誰かを探して歩いている。
アーケードみたいなところに入った。
たくさんの黒い頭の向こうから、
一人、ギターを持った、明るい色の髪の男が見えてきた。
歌っているらしい。
立ち止まって聴いている客が何人かいる。
その中に、どこかで見た少年。
それは僕で、ギターは高谷修二。
夜中に起きて、所長に電話しようとしたら、向こうからかかってきた。
やっぱり同じ夢を見ていた。
私が見ていたのはあの、所長と逃げていた女の子の視点。
所長の話だと、前にも同じ夢を何度か見て、修二とあの女の子は知り合いで、路上ライブのあと、3人で合流してどこかに行くけど、行き先まではいつもわからずに目が覚めると。
前に『高谷修二に会ったことがある』と言ったのは、この夢のことだった。
絶対、本当に起きたことなんだ。
所長は嬉しそうにそう言ったけど、バカが本人に会ったことあるから、修二本人に確認しようかと聞くと、急に沈んだ声になって、
それはやめようよ。
きっと、向こうは覚えてないよ。
そこで急に話す意欲がなくなったらしく、もう寝る、おやすみと言われてしまった。
本当はあれが誰か、確信がないのかもしれない。
バカピョンに頼んでみようかと思ったけど、余計なトラブルになったら困るから、少し様子を見てからにしよう。
でもなんで、私が所長と同じ夢を?
高谷修二は本当に、所長とあの女の子に会ってたんだろうか。
考えることが増えたおかげで、
今日も寝つけそうにない。




