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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年9月

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2015.9.18 サキの日記


 学校へ行かずに家にこもっていればいじめにあわずにすむ……たいていの人はそう思う。

 それは間違っている。

 LINEはだいぶ前にやめてるし、他のとこも退会しまくってる。それでも、よりによって先生が、余計なことを思いつくのだ。


 クラスのみんなで新橋さんへのメッセージを書きましょう、とか。



 先生はいい人だが、自分が受け持っている生徒がいかに残虐非道か全く理解していない。子供はピュアで純粋だと思い込んでいる。

 誰か教えて欲しい。人の机に使用済みの妊娠検査スティックを放り込んだり、『新橋は劇団員とヤって金を稼いでる』『中学の時に売春して中絶してる』なんてデマを平気でネットに書く奴のどこがピュアで純粋なのか。

 書き込みに関しては、劇団の人が怒ってやり返して大炎上し、双方が謝罪して収まったが、なぜ劇団が謝らなきゃいけないのか全く理解不能。しかも、校内の噂自体はまったく静まらなかったから、今でも私を『ヤってた』人だと思ってる生徒がたくさんいる。ヤるどころか、彼氏も男の友達すらもいたことがないというのに。


 先生が子供だった頃とは違うのだ。

 今の子は、自分が楽しむためなら、平気で人を追い詰めて苦しめる。



 戦場カメラマンが前に書いていた。

 大人の兵士より少年兵のほうが残酷だと。

 大人は話せばわかることもあるが、少年兵はただ殺すだけだ。


 ネットのやばい所でも見ないような罵詈雑言の束を目の前にして、私の気分はものすごく冷めていた。

 ここまで理由もなく(性格が暗いとか、親が芸能人とかいうのは置いとくとしても)嫌われると、もうお手上げ。要するに奴らは暇潰しに都合よく遊べる玩具を探して、弱そうな人間を標的にしているだけ。私の人格とはまるで関係ない。


 本当にそうだろうか。


 少しはましなメッセージがないか、汚い紙の束をめくってみたが、かろうじて見るに耐えるのは2、3枚。興味ないよと言いたげに『がんばって』とか書いてあるだけ。


 束ごと、燃えるゴミに投げ捨てた。



 手厳しい批判に慣れている劇団のカントクは、その後も全く気にせずに『遊びにいらっしゃい』と言ってくれた。ろくに劇なんか見たこともない人にでたらめな中傷記事を書かれたり、下手したら劇団自体が『いかがわしい集団』と思われて潰されかねないくらい大変だったのに。


 彼らにとっては、私はいつまでも『バカ新橋の娘』なのだろう。

 所長に劇団のことを電話で話したら興味がありそうだったから、今度遊びに行ったらいろいろ見聞きして報告しなくては。



 学校以外の世界を見つけなきゃいけない。

 それがどこかはわからないけれど。



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