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2015.8.15 サキの日記
その町には、何度か来たことがあった。
父の高校時代の友人が、北海道の「草しかない」町に住んでいる。
2人。
そのうち一人、平岸パパの一家はアパートをもっていて、よその町から秋倉高校に進学した生徒に部屋を提供していた。
少子化により、今はもぬけの空になったアパートに、夏休みの間『逃げ込む』ことにした。
夏休みが終わったら?
学校に戻る?
無理。
父から私の『精神崩壊』を聞いていたであろう平岸夫妻は、大事な孫でも扱うように私を大事にしてくれている。一人娘のあかねは、たいてい自分の趣味(BLマンガと自作同人誌執筆)に没頭して自分の部屋にこもり、めったに見かけない。
とにかく遠くに行きたかった。
できるだけ離れた所に。
私を知っている人が誰もいないところに。
あの女たちの蔑み笑いが聞こえないところ、
あの無神経男子たちの嘲笑が見えないところに。