表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年9月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/1131

2015.9.11 サキの日記


 学校には、2回くらい行った。といっても保健室と職員室と会議室?なんて呼べばいいかわからないけど、机と椅子しか置いてない小部屋で話をしただけ。

 私が驚いたのは、母が全く反対しないどころか、自分から学校に来たことだ。いつもなら私がらみの手続きは全てバカがやるのがうちの日常だった。なぜかというと、うちのメインの稼ぎ手は母だから。母には学校で起きたことは具体的には話していない。なのに、まるで全てお見通しのように先生に向かって淡々と、娘をここに通わせることはできない。事情はそちらもある程度把握しているはずだと言った。先生は最初知らないようなそぶりをしていたが、母が具体的にいじめの犯人の名前をあげ始め(教えた覚えがないのになぜか正確に知っていた)ここに親御さんを呼んで話をしてもいいんですよと言い出した。先生もこのまま対応が長引くとまずいと思ったのかもしれない。とりあえず休学扱いにすることになった。


 たぶん3年の見慣れない生徒が、廊下を歩く母を見て歓声を上げたが、授業中だったので人が集まる騒ぎにはならなかった。でも、噂は校内にあっという間に広まるだろう。もうここには戻らないほうが良さそうだと思った。

 帰りの車内で母はひたすら無言だった。もともとしゃべらない人なのだ。なぜいじめの犯人を知っているのかと聞いても答えてくれない。学校に行かないことになぜ反対しないのか聞いたら、



 私、学校は嫌いなの。



 冷たい表情で吐き捨てて、女優は去ってった。私は思い通りになったのに何だか不満だった。親って普通子供を学校に行かせたがるもんじゃないんだろうか。私の将来とか、考えていないのだろうか。


 将来。

 私にできる仕事があるとは思えない。


 数日ふて寝して、全く外に出ずに過ごした。地方公演中のバカピョンからのメールに混じって、懐かしい名前を見つけた。


 所長。


 体調不良で札幌の病院にいったけど、今は助手と研究所に戻っている、という内容だった。



 研究所。

 今すぐ飛んでいきたかった。この数週間のことを、あの窓辺のカウンターで所長に話したかった。

 所長のことは未だに何も知らないのに。



 学校やめることになりそう。


 と返事をしたら、すぐに着信があったから驚いた。




 どうしたの?




 よく知った声が聞こえた。

 親より所長のほうが私のことを心配してるんじゃないかと、その時思った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ