2016.1.16 研究所
助手は電話の受話器を持ったまま、何がどうなっているのだろうと考えを巡らせていた。
やっと帰路につけたと思ったらいつもの道は雪で通行止め。商店街側から徐行していたら、エプロン姿の見知らぬ奥さんが店から出てきて、
お宅の所長さんが雪かき手伝ってくれたから。
と、大して旨くもなさそうな彩りのない総菜のパックを渡され、帰ってきたら電話がたて続けに鳴り、やはり雪かきをしてもらったという話の長い婆さんと、
ホンナラ組がヨギナミの家に向かうのを見たからあとをつけたら、所長が家の中にいたのヨ。
浮気じゃない?ウフフフフ。
という、何かを勘違いしている変態のつげ口電話があった。
しばしポカーンと空中を眺めたあと、久方の部屋に行ってみると、本人は寝ていた。
無理矢理叩き起こしたが、
どこにも行ってないし、具合悪いから。
と、またすぐ寝てしまった。
いつもなら構わずにピアノを弾くのだが、今日は何か引っかかるものがあった。ヨギナミに電話してみたが、バイト中なのか、出ない。明日かけることにして、助手はまた車に乗り、松井カフェに向かった。前に別人がそこにいたようだと久方が言っていたし、どのくらい知られているか調べたほうが良さそうだ。
だから初めから正直に話しとけばッて言っただろうに。あのクソガキが。
帰ってきたとたん面倒なことになって、助手は苛立っていた。しかも、平岸あかねのことだ。久方が不倫女の所にいたことは、あっという間に言いふらされるに違いない。そこで何をしていたにせよ、本人は全く覚えていないだろうが。おかげで余計な手間が増えて、ピアノの練習時間は減る一方だ。




