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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年12月

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2015.12.29 サキの日記


 北国の冬の怖さ。吹雪くと外に出られない。朝はきれいに晴れていたのに、昼には吹雪が始まり、あっという間に、たかが徒歩5分や10分の近所にすら行けないような状態に。町役場から外出を控えろというメールが町中に送信され、私はこんな近所にいるのに、東京と同じように電話で所長と話していた。



 天気だけは仕方ないよ。

 年明けの晴れた日に、ファンタジーみたいな大木に案内するから一緒に行こう。



 窓の外は、まっ白。私は今平岸家にいる。すぐ隣のアパートからここの玄関にたどり着くのも大変なくらい、今日は風も雪もひどい。まともに雪つぶてが顔に当たると、呼吸すらできなくなる。



 札幌方面は晴れてるみたいなんだけどなあ。このへん一帯だけ局地的にやられてるな。



 平岸パパがテレビを見ながらぼやいていた。画面に映る札幌や函館では、雪は降っていなかった。



 暇なら手伝ってと言われたので、平岸ママとキッチンで遊んでいた。いや、平岸ママは真面目に正月の用意してたんだけど、私は冷蔵庫とか棚にある珍しいお菓子やジャム瓶ばかり気になって、むやみに漁ったあげく邪魔な質問ばかりしてしまった。平岸ママは、自分で作った自信作だけをピックアップして紹介し、帰りにいくつかお土産に持たせてくれると言った。嬉しいけど、荷物が重くなって大変そう。



 午後はテレビの間でひたすらダラダラしていた。せっかく時間できたから読書でもするべきだった。でも、スマホの画面を見る気にならなかった。なぜか、いつも中毒のようにいじってるアプリやゲームもやる気がしない。室内にいる時間が長くて娯楽も少ないから、ゲームやスマホの普及率はかなり高いよと、前に誰かが言っていた。たしかに、外に出れないと暇をもて余してしまう。



 何乙女がダラダラしてんのヨ。

 太るわヨ。



 怖い顔のあかねがやってきて、テレビをヨガのDVDに切り替えられた。しかも、私が東京で買った(けど一回も使ってない)やつと全く同じ本を持っていた。あかねは変態だけど、美人で、体も引き締まっている。理由はすぐにわかった。暖房の温度をやたらに上げて、『地獄のホットヨガ』を私にまで強要したから。体が固くて曲がらないのを、あかねが鬼コーチよろしく後ろから体重をかけてくるからめっちゃ痛い。



 いい悲鳴だこと。ウフフ……。



 しかも変態の囁きまで耳元で聞こえる。何プレイ!?

 丸々一時間、あかね女王に遊ばれた私は、暑さと痛さと水分不足でグッタリしていた。平岸ママは部屋の暑さと、バカみたいに白目むいて倒れている私のマヌケな様で事態を察知し、暖房を切ってから冷たいジンジャーエールを作ってくれた。ショウガがやたらに入っていて舌に響く。でも、脱水しかけてたから一気に飲んだ。本当に、体に染み入るように感じた。



 昔下宿してた女の子とよくやってたの。

 なつかしくなってまた始めちゃったのねえ。



 平岸ママはあかねの部屋に説教しに行ったけど、原稿書くのに夢中で全く取り合わなかったらしい。まさか女王様のマンガ描いてるんじゃないだろうなと、私は今、布団に潜って戦慄してる。吹雪は明日には止むそうだ。でも今は風の音が強くて、アパートが揺れている。怖くてなかなか眠れない。

私、こんなところで無事に2年過ごせるんだろうか。




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