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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年12月

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2015.12.28 サキの日記



『みんなって、具体的に誰?』



 河合先生の問いかけに、私がとっさに答えられたいじめっ子の名前は、たったの4人だった。ほんとはそれだけじゃない。見て見ぬふりをした傍観者がクラス中にいたはずだ。でもそこまでは言い出せなかった。白髪混じりの丸顔にメガネの先生は、うちの生徒は変人ばかりだが、前の学校の連中とは同一視せず、信頼してくれないか、みたいなことを言っていた。

 悪い人ではなさそうだ。


 面談の前に、田舎の学生とは思えないかっこいい男子に声をかけられ、成り行きで図書室に行ったら、こないだ道案内してくれた髪の長い子がいた……けど、別な生徒とケンカ中だったらしく、図書室のドアはイケメンに閉められ、時間まで休憩室で話したところによると、イケメンは奈良なんとかいう名前(やっぱり人の名前が覚えられない!)で、あかねと同じ学年。つまり未来のクラスメートだった。モデル志望で、お母さんもモデルと言い出したからびっくりした。こんな雪に閉ざされた町にそんな親子がいるとは。


 帰り玄関で、ヨギナミらしき人と髪の赤茶色い男子が、遠くからこちらを見ているのに気がついたけど、すぐに平岸パパが迎えに来ちゃったので挨拶もできなかった。たぶんあの二人とも、4月から同じ教室だ。


 所長にメールしようかと思ったけど、直接会いに行くことにした。平岸パパにそう言ったら帰りに寄ってくれた。秋倉高校に来ることになったと聞いて、所長は喜んでくれた。うっとうしい女子だと思われてないか心配だったから、私もほっとした。



 久方さん、正月は一人?



 平岸パパが、なんならうちに来たら?と、冗談なのか本気なのかわからない提案をしてた。所長は笑いながら丁寧に断っていた。今日はそれだけで帰った。夕飯の時間も迫っていたし。

 平岸家の世話になっている間は、夕方の時間厳守は必須なのだ。

 これから2年、これが続くんだなあと思うと少し心配になる。門限とかいう言葉とは、私は今まで全く縁のない暮らしをしていた。夜も気ままにコンビニに行ったり本探しに行ったり、そういうことはこの町ではできない。

 でも、夕飯が出てくるのはありがたいから文句はない。

 今のところは。




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