14/1131
2015.8.28 研究所 所長の部屋
亡霊のような人影が、薄暗い部屋の中に煙のように立ちのぼり、息ができない苦しさに喘いでいる久方創を、赤みがかった眼で見下ろしていた。目も髪も、赤い。
『何しに来やがったんだあいつは』
人影が窓の外に目を向け、忌々しく舌打ちをした。招かれざる客を追い出した後だった。
『危なかった……あんな若い女の子がこの有り様をみたら、怖がって二度と来なくなるかもな』
亡霊は、先ほどとは打って変わって、同情と心配を顔に出した。
久方創は彼に答えなかった。
完全に意識を失っていたからだ。




