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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年8月

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2015.8.28 サキの日記


 夏休みが始まってから初めて、ある人物からメールが来た。哀れっぽく許しを乞う、いかにも文才のない奴が書きそうな中身のなさ。どっかからコピペしたとしか思えない。普段散々『自分の言葉』とやらで人を罵ってるくせに、いざ文章を書くときには人の文章を丸写しする奴が多いのはなぜなんだろう。話すより書く方が楽に決まってるのに。だからこそブログやTwitterやFacebook……文字だらけ。でも、よく考えたら、写真中心の投稿が多い気がする。私みたいな人間には『書くこと』が自己表現の唯一の手段だが、ほとんどの人にとってはそうではないのかもしれない。

 そういえば、本来文章だけで済むようなブログ記事にも、先頭に写真がついていることが多くなっている気がする。前にバカとカントクが『昔より今のほうが見た目の派手さが重視されている』みたいな話題で盛り上がっていたっけ。なんにでも『飾り』をつけないといけない時代なのだろうか。


 地味な文章好きは、いつの時代も不利なのか。


 所長のところに先客がいた。助手が帰ってきたのかと思ったが、その人……白髪混じりの初老の女性……は、私を見るなりすぐ席を立って出ていってしまった。服装がフォーマルで、結婚式の帰りみたいに見えた。

 所長はいつもの場所にはいなかった。廊下に出て、何度か大声で呼んでみたけど、返事はなかった。地下室にもいない。階段を上がって探そうかと思ったけど、もともと廃墟だった建物の奥は改装も掃除もされてなくて、ひどく不気味だ。


 私は帰ることにした。


 暇潰しに駅前のコンビニまで歩いたら、途中ですれ違った車の運転手がメイド服のおばあさんだったのでビックリした。さっき研究所で見た人とは別な人みたいだった。

 ここにしか売っていないメロンアイスやハスカップジェラートを買いたかったけど、帰るまでに溶けてしまいそうだから、やめた。

 秋倉は暑い。

 最近は気温が下がってきたけど、30℃を越える日がかなり多いから、避暑地には向かないと思う。


 帰りに秋倉高校の生徒らしき2人とすれ違った。かなり大柄な男子と活発そうな女子、自転車。仲が良さそうだ。女の子が先頭を走りながら後ろの男子に叫んでいる。何を言っているかまでは聞こえないが、笑いが混じってたから楽しいんだろう。




 さっきのメールに返信しようか、2分くらい考えた結果、

 返事はせずに、消去することにした。


 それが自分のためだと、今は知っているから。




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