2015.8.27 サキの日記
レストランのオーナーはヨギナミが気に入ってるらしい。真面目な子だから。
所長と私は駅前のコンビニから帰るところだった。秋倉町にはこれといって有名な観光地もなく、広大すぎる景色はあっても店はほとんどない。
お土産は空港で買うことにした。
所長はレストランには行ったことがないらしい。歩くと一時間はかかるし、人に会うのが好きじゃないからだそうだ。
私とヨギナミ以外で研究所に来る人はいるんですかと聞いたら、設備の点検に定期的に誰か来てるのと、あとはヨギナミのクラスメートがよく勝手に入ってきて助手に捕まる……どうやって入ってくるのかと聞いたら『玄関のカギは常に開いてる』
所長って一体……。
サキくん。
帰りに玄関で呼び止められた。
本当に、前に僕にどこかで会った記憶、ない?
所長は真剣な、今までに見ないような厳しい顔をしていた。
ないでス。
私は正直に答えた。夏休み中考えたが、所長に似た人に会った記憶はなかった。
アパートに帰ってから一つだけ思い出した。
よく見る夢の話。
制服の女の子と、少年。
でも、所長は私よりだいぶ年上だし、私の学校とは制服が明らかに違う。髪だって長くない。
関係ないと思う。
でも、所長のあの様子から見て、私に似た女の子に前に会ったことがあるみたいだ。
誰だろう。
特別な人なのか。
だから知りもしない私に優しいのだろうか。
なぜ秋倉に来たんだろう?
来る前はどこで何を?
私は今日初めて、
所長のことを何も知らないことに気がついた。




