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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年12月

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2015.12.4 ヨギナミの家



 新橋早紀って知ってるか?




 久方創、いや、『誰だかわかんない人』が、スマホの画面を見ながら尋ねた。



 夏に遊びに来てた子。



 ヨギナミはそう答えた。確か、あかねが、あの所長とその子がつきあっていると言っていた。『夏中部屋に入り浸ってラブラブしてたのヨ……ウフフフフ』もちろん、ヨギナミは信じていない。そういうことができる人には、あの所長は見えない。噂好きな佐加でさえ『秋倉遊ぶとこないから、暇潰しに行ってただけじゃね?』と一蹴していた。



 あ、そうか、夏か……思い出した。サキか。



 それがどうかした?と聞いたら『メールが来てる』と。この人は、礼儀正しいほうの所長が、その子と仲が良いことを知らないのだろうか。

 それよりも……この目つきの鋭い人は一体誰?


 そんな正体不明の人は、今日も雪かきを手伝いに来て、暇そうにしているヨギナミの母親と世間話をし、今はヨギナミが部屋がわりにしているキッチンの机の横に座り込んで、本を読んでいる。杉浦に借りた本『行人』を。



 杉浦はいい本を薦めてるな。



 前にそう言っていた。スギウラの推薦図書は、クラスのほとんどが嫌がる。難しい、分厚くて長いのが多いから。ヨギナミも自分がおもしろいからではなく、スギウラのために読んでいるようなものだった。

 でもこの人は気に入ったらしい。何故だろう。


 ヨギナミは宿題をやっている……が、隣の変な人が気になって仕方がない。

 去年の冬にもよく来た。他の季節にもたまに来る。

 でも、所長ではない。最初は『久方さん』だと思っていたが、今はわかる。明らかに別人だ。



 でも、どう聞けばいいのかな?



 ヨギナミは長い間迷っていた。でも、自分も母親のことや学校のこと、そこに家事やバイトまで加わってもう手一杯だ。これ以上面倒なことには巻き込まれたくない。

 それに、雪かきを手伝ってくれなくなったら困る。最初嫌がっていた母も、なぜか最近来るのを楽しみにしているようだ。



 俺帰るけど、なんかやることある?



 夕方、本を読んでいた人が急に立ち上がった。

 ヨギナミはないと答えた。

『誰だかわからない人』はつまらなさそうな顔をして、何も言わずに出ていった。



 何か頼めばよかったかな。



 ヨギナミはそう思いながら時計を見て、バイトのことを思い出して慌てて着替え、家を飛び出した。雪の中にきれいな道ができていて、車道までヨギナミはまっすぐに歩いて行った。




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