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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年12月

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2015.12.2 サキの日記


 宮沢賢治の作品に『猫の事務所』というのがある。四匹の猫の書記のうち、一匹が『かま猫』つまり、かまどの中で眠る癖があって、いつも煤で汚い。一番仕事熱心なのに他の猫たちに嫌われていて、 仕事を取られてしまう。

 でも、最後にはライオンが『やめてしまえ』と解散を命じ、事務所自体がなくなってしまう。


 誰が偉いとか一番気に入られているとか、そんなことは、その場所、グループがなくなってしまったら意味がない……これは私が思ってるだけ。作者が何を意図してこれを書いたかはわからない。



 所長から黒猫の話を聞いたとき、この話を真っ先に思い出した。建物のどこに住んでいるかわかったら『かま猫』の写真を送ってもらうことにした。所長はこれから廃墟の中をひととおり探ってみるそうだ。



 ただ、助手は手伝ってくれないと思うんだよね。虫が嫌いだから他の部屋に入りたがらない。ほんと役に立たないんだよね。



 今すぐ手伝いに行きたいけど、塾と年末の模擬試験があるから行けない。学校に行ってなくても、学生は不自由だ。



 来たくなったら、いつでもおいで。



 通話が終わる前、所長はそう言ってくれた。




 カントクから『遊びに来ない?』というメールが来た。地方回りが終わって、年末の準備をしているらしい。クリスマスには恒例の飲み会だ。未成年も参加OKの10時まで。もちろん行く。



 今年も彼氏はいないわけ?早くつれてきてからかわせてヨ。



 毎年同じことを言われる。いつもは気にしないのに今年はつらい。男子なんて嫌いだ。

 また余計なこと思い出した。

 こないだ枕元に人が立ってて怖かったと話したら、



 なんでウチに電話しないのヨ!!うちの奥さんに泊めてもらいなさい。そんな誰だかわからない男に電話しちゃダメでしょ!?そういう、不安になってる女の子につけこむバカは世の中にたくさんいるのヨ!!



 めっちゃ説教入った。

 あとでカントクの奥さんからも電話が来たけど、今日は大丈夫だからと泊まりは断った。奥さんはいい人だけど、美術の先生で、会うとかならず私は絵を描かされる。その絵はいずれカントクを通じてうちのバカピョンの手に渡り、『娘が描いたピョーン』の題名で関係者にさらされる。


 自分がTwitterとかやめるだけじゃなくて、

 こういう他人やバカな身内にも警戒しなくてはいけない。

 悪気がないのはわかってるけど、ほんとにやめてほしい。


 でもわたしは、心配してくれる人がいるだけ、まだましだと思う。

 塾にはもっと大変な人がけっこういる。


 勉強しよ。





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