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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2018年3月

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2018.3.1 木曜日 卒業式② ヨギナミ

 式の後、ヨギナミは玄関で杉浦が来るのを待っていた。もちろん告白するためである。しかし、なかなかやってこない。


 ちょっと見てくる。


 佐加か廊下を走っていった。ヨギナミは緊張で頭がどうにかなりそうなのを懸命にこらえていた。

 落ち着くために壁にもたれかかって深呼吸していると、足音がして、向こうから杉浦が歩いてくるのが見えた。表情が険しい。


 杉浦!


 ヨギナミはばっと壁から離れて杉浦の前に出た。


 何かね?


 あのね、卒業する前に言いたいことがあるの。


 ヨギナミは勢いで言った。


 私、ずっと前から、杉浦のことが好き。


 杉浦は無言でヨギナミの目をじっと見た。それから、深いため息をついてこう言った。


 君の気持ちはうれしいのだが、僕は文学の研究に人生をささげることに決めたから、女性と付き合っている暇はないのだよ。


 そして、すぐ外に出ていってしまった。


 はは。


 ヨギナミの口から変な笑いがもれた。涙がこみ上げてきた。


 ふられちゃったあ。


 予想していたよりはショックではなかった。前からなんとなくわかっていた。杉浦は自分に興味を持っていない。でも、もう少し何か言ってくれてもいいのでは?

 ヨギナミが袖で涙をぬぐっていると、


 ねえ。


 いつの間にか、隣に高条がいた。


 杉浦と何話してたの?


 告白したの。


 えっ?


 でも、ふられちゃった。


 それを聞いた高条は、少しの間止まってから、


 よし!


 と叫んで、変なガッツポーズをした。しかし、その場にそぐわないことに気づいたのか、


 い、いや、あの、


 急に慌て始めた。


 フフフッ。


 その様子を見てたらおかしくなって、ヨギナミは笑ってしまった。


 あのさ、気にすることないと思うよ。杉浦って変人だからさ、そもそも人に興味あるかも怪しいし、ヨギナミはかわいいから他にいくらでもいい奴と付き合えると思うし。


 高条は真っ赤になりながらものすごい早口で言った。


 ありがとう。


 ヨギナミは残った涙をぬぐいながら微笑んだ。


 あのさ、これからホンナラ組がカフェに来るんだけど、来ない?このまま終わっちゃうのなんか名残惜しいからさ、カフェで何かやろうと思って。


 いいよ、行こう。


 ヨギナミと高条は、一緒に玄関を出た。






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