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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2018年2月

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2018.2.25 日曜日 修平と百合

「卒業式、行くよ」

 画面の向こうの修平が言った。

「ただ、車椅子を使うかもしれないけど」

「大丈夫なの?」

「旅に耐えられるかどうかだよね。たぶん大丈夫だと思う。俺はどうしても出たいからさ、たとえ卒業できなくても」

 修平は休みが多かったため、卒業に必要な単位が足りない状態だ。

「会えるの、楽しみにしてるね」

「でももう本当に最後なんだなあ。秋倉高校自体もなくなっちゃうし、みんなで集まるのも難しくなるかな」

「でもLINEはあるから連絡は取れるしょや」

「そうだね〜。でもやっぱさ、実際に毎日会うのとは違うよ」

「そうだね」

 百合はうなずいてから笑った。

「でも、大学に受かったらいつでも会えるよ」

「百合」

 修平が静かな声で言った。

「一つお願いがある」

「何?」

「俺のために人生を変えないでほしい」

 画面の中からまっすぐな目を向けてきた。

「俺がいなくてもそうしていたように、自分の人生のことを一番に考えて、自分の夢を追いかけてほしい。今まで、病気の家族のせいでやりたいことができなくなった人をたくさん見てきた。百合にはそうなってほしくない。俺のために自分を犠牲にするようなことはしないでほしい」

「わかった」

「俺のことは、2番目か3番目くらいに考えてよ」

「それはムリ」

「ムリ?」

「だって好きだもの。好きな人は1番。それで、自分の人生をどうするかはまた別の問題」

「そう、かな〜?」

 修平は困惑したような、照れたような顔をした。

「大丈夫。私は自分の人生のことをしっかり考えてる。いつか自分の本屋か図書館を作りたい。それは変わらない」

「そっか〜」

「そしたら修平にも働いてもらいます」

 百合が偉そうに言った。

「え?俺?」

「図書館の受付なら、体力なくても車椅子でもできるでしょう」

「そっか、なるほど」

「そういう予定でおりますので」

「じゃ、それまでに体力つけとくよ」

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 2人で頭を下げて、それから声に出して笑った。

「4月、楽しみだね」

 百合が言った。

「うん」

 修平が言った。

 2人の会話は、夜中まで続いた。





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