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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2018年2月

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2018.2.19 月曜日 サキの日記

 松井カフェに行って、マスターや他のいろんな人と話をした。マスターは秋倉高校の生徒がここに来なくなることをさみしく思っているようだ。店の営業は観光客が増えてきたので問題ないらしい。


 こんな何もない所に、何しに来るのかしらね。


 とマスターは言う。その『なにもない』が絵になることにマスターは気づいていない。しかも今はインスタが流行りだしていて、一面の雪景色は立派な『インスタ映え』スポットになっている。夜になったら空一面に星が見えるし。

 カウンターの向こうに勇気がいて、コーヒーをいれるのを手伝っている。まだオリジナルブレンドの開発にこだわっているみたいだけど、奴のいれるコーヒーはどれもこれも苦い。

 ふと、付き合っていた頃を思い出して、あのまま別れずにいたらどうなっていただろうかと考えた。私もカウンターの向こうで店を手伝うようになってたりしただろうか。でもそれはたぶん、ありえないことだった。

 本当に好きな人としか付き合っちゃダメだ。

 でも『本当に好き』って何だろう?

 車で北海道を回っているという人が話しかけてきた。こんな寒くて雪の多い時になぜ?と聞いたら『冬の景色が見たかったんだよね』と言った。宮崎の人だった。修学旅行で九州行った話したら『宮崎にも来ればよかったのに〜』と残念がられた。そして『海岸によく死体が上がる』というめっちゃ怖い話を聞かされた。

 旅がしたいな。

 受験終わったし。大学行ったらお金貯めていろんな所に行こう。

 リオに会いにニューヨークにも行かなきゃいけないし、と思ってアメリカまでの飛行機代を調べたら高すぎてため息が出た。自力でこの金額を稼ぐのは大変かも。でも行きたい。バイト探さなきゃな。うちの親に言ったら出してもらえそうだけど、私はもう大人なんだから、あまり親に頼りたくない。

 よき人を目指したい。

 何が『よき人』なのかはよくわからないけれど。

 まずはいろんな所に行って、いろんな人に会うのが大事だと思う。


 帰りは雪だった。白い粒がゆっくりと落ちてくる。

 こういう景色を見られるのもあと数日だと思って、わざとゆっくり歩いて帰ってきた。風が冷たい。でもそれが心地よい。このきれいな空気とももうお別れだ。それはやはりさびしい。

 心の中にいろいろな思いがあるのに、どうしてもうまく文章にできない。

 ここにいた2年半で、私は成長したはずだ。なのに、文章だけはあまり上達していないように思う。まだ、思うことの5%くらいしか表現できていない。残りの、消えてしまった95%の中に大事なことがあったらどうしようって考えてしまう。

 もっと表現できることを増やしたい。

 文章の練習もしなきゃな。誰かに習った方がいいのかな。

 バイトや演劇と両立できるかな。けっこうきつそうだな。



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