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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2018年1月

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2018.1.19 金曜日 サキの日記

 結城さんに会いに行っちゃダメなんだろうか。

 きっとダメなんだろうな。わざわざLINEまで一度消したってことは、もう私とは関わらないつもりなんだろう。

 でも、それってひどくない?

 私の気持ちは?


 しばらく忘れてたのに一度思い出すと止まらない。抱きつきたくなるような背中、ちょっと人を小バカにしたような笑い方。偉そうな話し方。


 今日は杉浦塾があって、2月の私大受験に向けて勉強してたんだけど、私は結城さんのことばっかり考えて集中できず、杉浦にそのことを感づかれて嫌味を言われたりした。かわそうと思って所長が話してた詩の話をしたら杉浦は大いに乗ってしまい、自分のお気に入りの詩集を持ってきて長話を始めた。たぶん誰も聞いてなかったと思うけど。

 山村暮鳥の『風景』という詩があって、それは、『いちめんのなのはな』という文がひたすら繰り返されるものなんだけど、私はそれを『いちめんのくさはら』に直せばそのまま秋倉の風景になると思った。


 いちめんのくさはら

 いちめんのくさはら

 いちめんのくさはら

 所長が歩いている

 いちめんのくさはら


 みたいな。今気づいたけど、私の頭の中の草原のイメージにはもう所長の姿が入り込んでいて消えない。あれは偽りのイメージで、クリスマスに所長が叩き壊したはずなんだけど。

 一度頭に染み付いたイメージは、なかなか消せないんだな。

 

 私は今日、朝起きた瞬間から結城さんのことばかり思い出していた。そんなことしても無駄なのに。

 なぜ所長を好きになれないんだろう。

 あんなに優しくて、私のことを好きでいてくれるのに。

 結城さんに色気がありすぎるから悪いんだ。今でもあの色気でサックスの女の子とかを誘惑しているのかと思うと腹が立つ。

 いい女になろう。

 びっくりするくらいいい人になって見返してやろう。

 まず大学に行かないと。でも今日は集中できなかったな。

 明日からやる。





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