表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2018年1月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1082/1131

2018.1.16 火曜日 サキの日記

 佐加とケンカした。

 卒業旅行の話してたら急に『サキは親が金持ちだからいいけどさ』とか言い出した。私達は予算に限りがあるからいろいろ考えなきゃいけないけど、あんたは何も考えなくていいからいいよね、とか。

 そんなことはない。うちの親だって無限にお金出せるほど金持ちじゃない。現に卒業旅行だって海外はやめて国内にしなさいって言われている(お金の問題というより、治安が心配だかららしいけど)。

 そういうことを言い出したのが佐加だということが私にはショックだった。今までそんな妬んでるそぶり全然見せなかったのに。むしろ、一番私のことを理解してくれてるような気がしてたのに。


 あんたは恵まれてるのよ。

 自分で気づいてるでしょ?


 あかねにまで言われた。


 うちもハゲが金持ちだからね。いろいろ言われる。でも、だから何なの?って感じ。親が金持ちだったら子どもが突然変異するとでも思ってるのか?何も変わらないのにって、そう思わない?


 そうだね。


 佐加は後でLINEで謝ってきた。そして、めずらしく長文で、前から私のことがうらやましかった、自分が憧れているキラキラした世界の近くにいるから──とかいろいろ書いてきた。私はもういいよと返事した。

 佐加は誤解している。

 女優の娘に生まれたからって、直ちにキラキラした世界に入れるわけじゃない。

 私にそんなキラキラ感ないし。

 だいいち、女優の現実は何もキラキラなんかしてない。ただの、たくさんある職業のうちの一つというだけだ。たまたま人前に出ることが多いから人によく知られる。それだけだ。

 私が思うに、キラキラした世界なんてこの世にない。

 一時的に輝いているように見えるだけで、あとの大半はただの日常だ。みんなそこがわかっていない。自分が住んでいる世界とは別にキラキラした世界があると思っている。でも、そんなのは、ネットやメディア、あるいは自分の心が作り出したまやかしだ。

 世界は一つしかない。

 自分の住んでいる世界が本当の世界。

 あとはまやかしでしかない。

 どうしてみんな気づかないんだろう?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ