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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2018年1月

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2018.1.7 日曜日 サキの日記

 会社の2代目はめずらしくない。職人技も代々受け継がれていて、みんなそれはいいことだと思っている。農家や店で子どもが実家を継ぐのはよくある話というか、当たり前でもある。

 なのに、芸能人2世だけ妙に厳しく当たられるのはなぜか。

 私は父や母と同じ職業につく気はない。演技なんてできないからだ。気分がすぐ顔に出るから。私は文章が書きたい。

 なのに『芸能人の2世って楽でいいよね』とか書き込んでくる奴がいる。

 しかも、全然関係ない、秋倉の駅前通りを紹介した記事とかに、親の金で遊んでんだろ的なことを書かれる。

 何なの?


 うらやましいんじゃない?


 ヨギナミが言った。


 裕福な家に生まれたのは事実でしょ。


 なんかトゲがある言い方だ。

 ヨギナミがいなくなってからあかねが近寄ってきて、


 書き込んだのあの子なんじゃない?


 と言って意地悪な笑みを浮かべた。

 私は親が働くのを見て育った。ただ、おバカな父の場合、仕事してる時も遊んでいるようにしか見えないことが多かったけど。小さい頃から親がいる世界を間近で見ていたら、その世界に詳しくなっていつのまにかその一員になっていてもおかしくはない。職人とか農家の子はみんなそうなんじゃないか。

 不思議なのは、親と同じ職業につくのが『楽なこと』だとみんなが思い込んでいることだ。そんなわけない。何かのプロになるには自力で一から物事を学ばなきゃいけない。親の能力がそのまま子どもに受け継がれたりなんて絶対しない。親が弁護士でも、子どもがそのまま弁護士になれるわけではない。自力で試験に通って、経験を積まなきゃいけない。

 親がどんなに裕福だったり有能だったりしても、子ども達はまっさらで生まれてくるので、自分の人生は一から創っていくしかない。

 みんなそのことを忘れている。2代目の子どもは何でも手取り足取り親にやってもらって楽してると思ってる。そうじゃない。私達には別のプレッシャーがある。『親は絶対越えられないかもしれない』というやつ。本来人はそれぞれ唯一無二の存在のはずなのに、いちいち親と比べられて評価が歪む。苦労してるのに楽してると思われる。

 理不尽だ。

 そんなことを考えて、どうやってfacebookの記事にまとめようかしばらく悩んでたけど、結局このことは書かないことにした。悪意のある書き込みにいちいち反応してもきりがない。

 センターまであと1週間もないのに、こんなことに時間を費やしていていいわけがない。

 私は勉強に集中することにした。

 大学に行ったらバイトしよう。親に頼りっぱなしではいけない。

 でも、なんでこんなこといちいち気にしなきゃいけないんだろう。

 慣れてるつもりだった。親のことでいろいろ言われることはよくあったから。特に妙子が出現してからは。

 でも、私の人生まで親絡みで非難されると『それは違うんじゃない?』と思う。

 あの2人と私は全く別の人間ですから!




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