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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2015年11月

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2015.11.26 サキの日記

 午後3時に起きた。


 ぼんやりとした頭で、ラジオのバカのバカ話を聞いた。


 昨日、怖い夢を見て、マンション中を荒らしまくった上に所長までたたき起こして、徹夜でどうでもいい学校のいじめの話とかしてしまった。前に学校やめる理由聞かれたときは、対人関係とか、大雑把に言って誤魔化したのに。

 でも、所長は優しすぎる。

 夜中に起こされて『泣いてませんでした?』とかわけのわからないこと言われたのに、

 何だろうあの神対応?

 無理してるんじゃないだろうか。

 ほんとは怒ってて、言えなかっただけかも。

 何で私、『泣いてませんか』なんて口走ったんだろう?


 でも、あの時、ほんとに感じた。

 所長が今、泣いてるって。


 もしかしたら、泣きたかったのは私で、

 よく話してる所長に、そのイメージをかぶせてしまったのかもしれない。


 私、弱ってるなあ。



 サキ君。ご両親がそんなに長い間帰ってこないなら、誰が側にいてくれる人を探したほうがいいんじゃない?



 所長にデイケアとカウンセラーの話をするのを忘れていた。私があまり行ってないだけで、助けてくれる人はいる。それに、もう16歳なんだから、親がいなくても自分のことはできる。高校から地元を離れて一人で暮らす学生なんか、日本中にいくらでもいる。



 僕が言いたいのはそういうことじゃなくて……。



 なんとなく先が読めた。聞きたくなかったので話題を変えてもらった。所長だって家族の話はしたくないでしょ?と反撃して。



 私、すごく嫌な奴だ。



 ラジオのバカは調子よくこんなバカ話をしていた。



 俺の才能なんて一つしかねえもん。ハッタリをかますことにかけては一流よ。ウソをつくことに関しては誰にも負けないね。高校で由希の気をひいた時だって演劇部でさあ、あいつの好きな役演じてたんだからもう、立派なハッタリよ。

 演劇だけじゃない、小説も音楽も、芸術ってのは偉大なウソなんだ。ウソの世界に制限はない。自由に何でもウソを書けるからこそ現実が描けんのよ。現実では言いにくいような事実だって平気で出せんのよ。そういうもんだと思うよ俺は。








 そのバカは、夜中にうちに帰ってきた。が、私が昨日パニクったせいで家中に物が散乱していて、慌てたバカは走り回っていた。



 なんだこりゃ!?

 台風?強盗?



 夜中に枕元に人が立っていたと話したら、



 俺が高校んときも同じことがあったなあ。由希にフラれた男の亡霊が俺をじーっと見ててさあ、俺は金縛りで、ほんとに動けなくてさあ。



 100%ウソの昔話に流された。

 私はめっちゃ怖かったのに。



 バカはまた清掃業者を頼むと言い出した。

 私は明日、出かけた方がいいらしい。どうせ塾もあるし、デイケアにも最近行ってないからちょうどいい気もするけど。


 バカは今晩家にいる。いたらいたでなんか、落ち着きなくうろついて、夜中になってもガタガタ音がしてうるさい。私はやっぱりいろいろ考えてしまい、親がいようがいまいがどうせ眠れない。



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