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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2018年1月

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2018.1.2 火曜日 サキの日記

 朝起きたらおバカな父がいなかった。去年を思い出して慌てて研究所に行ったら、所長と一緒にコーヒー飲んでトーストかじってた。飛び蹴りを食らわせてやった。さらにボコボコにしようとした所を所長に止められ、『せっかく来たんだからゆっくりしていけば』と言われたけどすぐ帰らせた。


 あの男はまだお前に気があるぞォ。


 帰りにぼやかれたので背中叩いてやった。

 所長は私が来たのを見た時、すごくうれしそうな顔をした。私はそれを見て後ろめたくなった。

 なんでこんな気分にならなきゃいけないんだろう。



 両親と一緒に札幌へ行き、北海道神宮でおじいちゃん達と待ち合わせた。秋倉神社の100倍くらい人がいて、東京みたいだと思った。北海道じゅうの人が集まってしまったのかと思うくらい。2日になってもこれだ。


 1日には絶対来ちゃいけないんだよ。

 人が多すぎてつぶされて死ぬから。


 とおじいちゃんが言っていた。死ぬは大げさだけど、人が多すぎるのは事実だ。おみくじを引いたら中吉だった。まあまあ。父が引いたおみくじには恋愛運がよさそうなことが書いてあったらしく、『今年もモテるぞぉ』とバカみたいに喜んでいたのだが、母の方に『待ち人来る』って書いてあるのを見て『待ち人?誰?誰だよ?』としつこく聞き始めた。母は『いろいろあるのよね〜』とニヤニヤして、父をますます焦らせていた。おじいちゃんとおばあちゃんはそんな息子を完全無視して、私のためにお守りを選んで買ってくれた。試験も近いし。

 

 今年からは、今までとは違う気分で生きていけそう。


 おみくじを結んだ後、母はそう言って笑い、大きな伸びをした。近くにいた人が正体に気づいて『サインください』『写真撮っていいですか』と聞いてきた。そろそろ帰った方がいいと思った。後でインスタ見たら、その時の写真がもうあげられていた。

 インスタ、早くて怖いな。

 おじいちゃんの車にたどり着くまでに、何人もの人に声をかけられたり写真撮られたりしていた。父と母はもう慣れているので半分ふざけながら応じていた。かわいそうなのはおじいちゃんおばあちゃんで、ずっとぎこちない作り笑いをしていた。嫌だったんだろうな。

 この両親と生きていくってことは、こういうことに慣れなきゃいけないってことだ。私ももう慣れてるつもり。でも、自分の写真を撮られるのは嫌だし、東京に戻ってからのことを考えるとゆううつ。




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