表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年12月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1066/1131

2017.12.31 日曜日 サキの日記

 父は紅白を見ながら『俺のほうが司会に向いてる』などとほざいている。会ったことのある歌手が出てくるとその人の話を延々と語るので、歌がぜんぜん聞こえない。母がたまに、ああ、この人私も会ったことがあるとか言って笑ってる。平岸ママはものすごく機嫌が悪い。自分が好きな歌手をおバカにディスられたからだ。純也さんと林音さんは2人でハネムーンの話してる。イタリアに行くらしい。いいなあ。私は──どこがいいか考えてたら、外国にあまり興味がないことに気づいた。行きたい国がない。とりあえずニューヨークでいいかな。リオもいるし。

 思い出したのでリオに連絡してみたら、どこかのカウントダウンパーティーに出る予定らしい。友達と一緒に写ってる写真送ってきたけど、赤いドレスが似合いすぎてて、もうセレブにしか見えない。


 昼、札幌のおばあちゃんの所に行った。本当はこっちで年を越すべきなんじゃないかとちょっと思ったりしたけど、おじいちゃんは『五月がいるとうるさくて紅白が見れない』と言っていた。そのとおりだよ、おじいちゃん。

 みんなで回転寿司に行ったんだけど、母の食べっぷりにみんな驚いていた。この人は、好きなものを食べ始めると止まらないのだ。皿はどんどん積み上がっていき、とうとう席を隔てているパーテーションを超えた。おばあちゃんはポカーンとその皿タワーを見ていた。代金はもちろん父が払った。東京の高い店だと絶対母が払うんだけど、札幌では父が払うことになっている。たぶん地元でいいかっこしたいだけなんだろうけど。

 イトーヨーカドーで一緒に買い物して、おばあちゃんにかわいい花のバレッタを買ってもらい、夕方には秋倉に戻った。

 母は昨日から元気いっぱいだ。何かが吹っ切れたみたいに明るく、さわやかな人になっていた。橋本が消えたって話した時はあまり反応がなかったけど、やはり、重荷になっていたことが一つ解消して楽になったってことなのかなと思う。

 カウントダウンを見て除夜の鐘を聞いてから、私は自分の部屋に戻った。とうとう2018年だ、卒業だ。そして、受かれば大学だ。

 人生が始まる。そう、これは始まりだ。卒業は終わりじゃない。スタートだ。私の人生は今年、やっと始まる。

 何しよう。どうしよう。

 まだ大学受かってないのにそんなことを考えてしまい、なかなか眠れない。

 今日は朝まで起きてようかな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ