2017.12.31 日曜日 サキの日記
父は紅白を見ながら『俺のほうが司会に向いてる』などとほざいている。会ったことのある歌手が出てくるとその人の話を延々と語るので、歌がぜんぜん聞こえない。母がたまに、ああ、この人私も会ったことがあるとか言って笑ってる。平岸ママはものすごく機嫌が悪い。自分が好きな歌手をおバカにディスられたからだ。純也さんと林音さんは2人でハネムーンの話してる。イタリアに行くらしい。いいなあ。私は──どこがいいか考えてたら、外国にあまり興味がないことに気づいた。行きたい国がない。とりあえずニューヨークでいいかな。リオもいるし。
思い出したのでリオに連絡してみたら、どこかのカウントダウンパーティーに出る予定らしい。友達と一緒に写ってる写真送ってきたけど、赤いドレスが似合いすぎてて、もうセレブにしか見えない。
昼、札幌のおばあちゃんの所に行った。本当はこっちで年を越すべきなんじゃないかとちょっと思ったりしたけど、おじいちゃんは『五月がいるとうるさくて紅白が見れない』と言っていた。そのとおりだよ、おじいちゃん。
みんなで回転寿司に行ったんだけど、母の食べっぷりにみんな驚いていた。この人は、好きなものを食べ始めると止まらないのだ。皿はどんどん積み上がっていき、とうとう席を隔てているパーテーションを超えた。おばあちゃんはポカーンとその皿タワーを見ていた。代金はもちろん父が払った。東京の高い店だと絶対母が払うんだけど、札幌では父が払うことになっている。たぶん地元でいいかっこしたいだけなんだろうけど。
イトーヨーカドーで一緒に買い物して、おばあちゃんにかわいい花のバレッタを買ってもらい、夕方には秋倉に戻った。
母は昨日から元気いっぱいだ。何かが吹っ切れたみたいに明るく、さわやかな人になっていた。橋本が消えたって話した時はあまり反応がなかったけど、やはり、重荷になっていたことが一つ解消して楽になったってことなのかなと思う。
カウントダウンを見て除夜の鐘を聞いてから、私は自分の部屋に戻った。とうとう2018年だ、卒業だ。そして、受かれば大学だ。
人生が始まる。そう、これは始まりだ。卒業は終わりじゃない。スタートだ。私の人生は今年、やっと始まる。
何しよう。どうしよう。
まだ大学受かってないのにそんなことを考えてしまい、なかなか眠れない。
今日は朝まで起きてようかな。




