2015.11.24 研究所
寒さで早く起きた久方は、窓の外に舞い降りる白い雪を、どこか遠い目で眺めていた。
雪かきの季節が本格的に来たなあ。
まだ暗いが、積もって木々や景色全体が白くなっているのがわかる。
雨と違い、雪は音を立てない。
見とれている間に静かに降り積もり、人の生活や、時に命までもおびやかす。
でも、窓からこうやって眺めていると、綺麗だ。
ぼんやりと景色に見とれていると、
ジャジャジャジャーン!
奴がピアノを弾き始めた。まるでゲームの開始音だ。
久方は頭を勢いよくカウンターにぶつけた。雪の風情が台無しだ。
助手の感性と常識の欠落にうんざりしている『所長』は、ベッドホンをつけてテレビを見ながら、ソファーに横になった。本来なら静かで雰囲気のある朝のはずなのに、なぜどうでもいいテレビショッピングや暗いニュースを見なくてはいけないのだろう。
納得がいかない。
しかし、文句が言えない。
天気予報によると、雪はしばらく続くようだ。北海道の気温は最高でもマイナスに近いが、東京は21度まで上がるという。同じ国とは思えない寒暖差だ。
早紀は眠っているだろうか。それとも夜通し起きているだろうか。
ピアノは、お得意の暗い曲に移っていた。久方は目に悪い画面を消し、ベッドホンをつけたまま目を閉じた。冷えたせいか喉に痛みを感じ、全身がだるかった。
今日はゆっくり休んだほうがいいかもしれない。




