2017.12.2 土曜日 修平 病院
修平はリハビリで歩く練習をしていた。まだ、両手で手すりをつかまないと前には進めない。しかし、起き上がれるようになっただけでも、大変な進歩だ。
また外を歩けるようになりたい。
絶対に。
その一念で、二本の手すりの間を何度も歩いた。
そのうちに足と腕が疲れてしまい、病室に戻って休むことになった。今はこれだけでもうくたくただ。一日の残りの時間は休息に使わなければならない。
ベッドに横になっていると、母ユエがやってきた。
「どうだい、今日の調子は」
「だいぶいいよ」
修平はそう答えてからこう続けた。
「ママさん」
「何?」
「卒業式、出れないかな」
ユエがはっとして息子を見ると、何かを深く考えているような目で、天井の一点をじっと見つめていた。
「俺が卒業できないのはもう確定だけど、他の奴らが卒業していくところは見たい。それに、俺もあの学校に行けてた人だっていう証がほしい。だから卒業式に行きたい」
修平はユエの方を見た。
「どうかな?」
彼自身、できるかどうか確信が持てないような言い方だ。
ユエは何と答えていいかわからず、持ってきた弁当の包みをやたらに指先でいじくった。




