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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年11月

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2017.11.30 木曜日 札幌

 久方創は創成川を眺めていた。このあたりは奈々子の死後公園になっていて、さまよっていた当時とは景色が大きく変わっていた。幽霊達が消えていった夢の中の創成川と、現実のこの場所がはたして関係しているのか、久方にもよくわからなかった。

 それでも、この場所と自分には何か深いつながりがある。その気持ちは変わらなかった。

 北海道に来ていろいろなことがわかった。自分は何者なのか、幼少期に何が起きたのか、どうして自分はこうなのか──そう、自分が何なのか、ようやく知ることができた。

 ここから、前に進まなくてはいけない。

 久方は今日医者とカウンセラーに会い、神戸に戻ったら本格的にトラウマの治療に専念することに決めた。昔起きたことはまだ自分の身体の中に残っていて、人生に影響を与え続けている。治すにはじっくり取り組まなくては──やっとそう思えるようになった。

 久方はしばらく小さな川を眺めた後、狸小路を歩き、かつて修二達が歌っていた4丁目あたりをうろついた。そこにはもう当時の面影はなかった。外国人観光客が増え、大きなスクリーンが常に広告をがなり立てている。ここで楽器を演奏したり歌ったりする人はもういないのだろう。

 街も人も、変わっていく。

 かつてここを、自分と橋本がさまよっていた。無視する人もいたが助けてくれる人もいた。その人達のおかげで今、自分はここで息をしている。


 これからも生きなくては。

 時々死にたくなる自分を励ましながら──


 久方はそう決意して、帰りの道を歩き出した。






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