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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年11月

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2017.11.29 水曜日 サキの日記

 人は誰かに育てられているのではなく、

『自分で自分を育てている』のだそうだ。


 スマコンと伊藤ちゃんがそんな話をしているのが聞こえたので、思わず割って入ってしまった。私にとっては衝撃的な発見だったからだ。

 自分で何かを判断するたびに、私達は自分自身に何かを教えている。何かをするたびに『そうすること』を自分に教えているのだ。5時に勉強すると、『5時に勉強すること』を自分に教えたことになるので、次の日も同じことをする可能性が高い。『ポテトチップ食って寝ること』をすると、それを自分に教えたことになるから、次からも同じことをする可能性が高い。

 つまり、何が習慣になるかは自分が決めている。最初に無意識に選んだことが、繰り返されるうちに自分の習性になる。だから、人は自分で自分自身を作り上げていると言える。

 なんか上手く説明できないけど、これはとにかくすごいことなのだ。

 スマコンと伊藤ちゃんの話によると、私達は他人に接する時も同じことをしている。ある人を怖いと思うと、次に会った時も怖いと思うようになる。高圧的な人に嫌々従うと、その『嫌々従うこと』を自分に教えたことになる。そして、それは繰り返される。

 この話のポイントは、『相手に教わった』とか『相手に何かされた』のではなく、『自分でそれを選択した』ということだ。その人を怖がることに『自分が』決めた。抗うのではなく従うことを『自分が』決めた。そして自分が決めた通りの人間になっていく。

 人はそうやって自分の行動を決め、自分を育てている。

 良い方にも、悪い方にも。

 伊藤ちゃんは母親と弟がよくケンカしていたため、『2人とは関わらない』という教育を自分に施したそうだ。そうしないと感情の渦に巻き込まれてしまうから。それは平和にはプラスだったけど、『家族が何を考えているかわからない』という点でマイナスになっているそうだ。

 私も母については『女優で忙しいんだから文句言っちゃいけない』と思っていた。それも、母に言われたのではなくて、『私が勝手に判断した』ことだった。私は自分で自分にそういう教育をしたのだ。

 もう、自分に変なことを教えるのはやめよう。

 その話の流れで、今日は女子全員が平岸家に集まって、真面目に勉強した。女子がこんなにいるのに、おしゃべりに脱線する子は一人もいなかった。きっと今日は『自分に怠けることを教えない』ということをみんなが意識していたんだと思う。



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