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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年11月

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2017.11.27 月曜日 サキの日記

 伊藤ちゃんと同じ飛行機で受験行くことになった。宗教の話をされないことを祈ろう。修平の話なら少しは聞いてやってもいい。でも、少しだけだ。

 良い人間になるにはどうしたらいいか考えてる。今だって悪い人ではない。人には親切にしているつもりだ。約束や時間は守るし、進んで悪いことはしない。でもたまに悪口を言ったり冷たい態度をとってしまうことはあった。主にホソマユと修平に対してだ。

 良い人間とはそもそも何だろう?本にはよく『いい人はやめよう』『いい人は損をする』と書いてある。でもある医者はこう書いていた。『いい人になるのは良いことだ。そもそもいい人なんてめったにいない。自分はいい人だと思い込んでいる人は多いが』。

 人に迷惑をかけたくないから死ぬとか、病気なのに治療を受けないとか、疲れているのに休まないという人がいる。そういう人は、まわりにとってはかえって迷惑だと思う。

『あなたにとっていい人ってどんな人?』とクラスの人に聞いてみた。『優しい人』とか『性格のいい人』と答える人が多かった。ホソマユは知性がどうとか言ってたけどよく聞いてなかった。佐加に聞いたら『ヨギナミ』って答えた。ヨギナミは『私はいい人じゃない』と言った。それから、生活が苦しい時にレストランの人が食べ物を分けてくれたのがありがたかったと言った。藤木は、髪を切ってあげた時に『ありがとう』と言ってくれる町のおじいちゃんの話をしていた。


 人間味。


 人と人とのやりとりがあること。言葉の掛け合いや物のやりとりと一緒に心が通じ合うこと。それができる人が『いい人』なのかもしれない。

 人が物語を読む時も、この、良い意味での人間味を求めているのだろう。規則正しく動くだけの機械の話を読みたい人なんていないと思うし。

 いい人とは何か考えて、始めは、性格の良さだとか優しさだとか、『その人に備わっている能力』ばかり浮かんでいたけど、実はそうではなくて、いい人とはすなわち『いい人間関係の中にいる人』『人と心のやりとりができる人』のことなのではないか。


 今日こんなことばっかり考えて勉強しなかったな。

 まあ、いいや。だってこれ、たぶん勉強より大事なことだと思うし。



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