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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年10月

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2017.10.28 土曜日 サキの日記

 なんで私は、自分を愛してくれない人に近づいてしまうんだろう?

 畠山は人間のクズだったし、結城さんが好きなのは奈々子だった。でも、奈々子がいなくなったらもしかしたら──そんな期待は今日完全に吹き飛んだ。

 平岸パパに泣きついて結城さんのマンションまで行ってもらった。

 結城さんはもう引っ越して、いなかった。

 私達の前から完全に姿を消してしまった。保坂も行き先は知らないという。LINEのアカウントまで消滅していた。

 そこまでするか。

 放心状態の私をなぐさめるため、平岸パパとあかねがジンギスカンに連れて行ってくれた。そこで羊一頭まるごとくらいの肉をヤケ食いした。


 よかったのよ。結城さんってどっか危ない人っぽかったじゃない?

 付き合ってもいいこと絶対ないって。

 あんたこれから東京行くんだから、いい男はいくらでも捕まえられるでしょ。

 早く元気出して受験勉強しなさいよ。


 そうだ、私は受験生だった。

 最近起きたことがどれも大きすぎてまた忘れてた。


 伊藤ちゃんが貸してくれた本に、

『あなた自身をもっと愛される価値のある存在にしましょう』

『そしてもし、あなたがそのようになったのに、それでも相手が去って行ったならば、彼らはあなたにとって正しい相手ではなかったのです』

 と書いてあった。

『愛される価値のある存在』ってどうやったらなれるの?

 そこで気づいた。私は、よい人間になろうと努力したことが今までほとんどなかったのではないかということに。誰かに愛されたいとは思ってた。でも、そのために何か努力したことがあるかと言われると──ないかも。ただ、

『どうして私にかまってくれないの!?』

 って子供っぽくキレていただけで、相手のために何かしようとか、自分が成長しようとか、そういうことをやってこなかったかも。

 だめだ、このままではまともな大人になれない。

 人間的に成長しなきゃ。

 私の理性の部分はそう言っている。でも、子供の部分がまだ、

『何も言わずにいなくなっちゃうなんて、

 結城さんはひどい!』

 って泣き叫んでる。こいつをどう止めたらいいんだ。

 今日眠れなさそうだけどコーヒーはやめとこう。





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