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早紀と所長の二年半  作者: 水島素良
2017年10月

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2017.10.27 金曜日 河合先生への日誌 伊藤百合

 大荒れ警報です。新橋さんが荒れてます。先生だって気づいてますよね。授業中にソワソワしてたかと思うと外に出てって、どうも、裏で泣いてたらしいんですよね。結城さんがいなくなったからって。

 新橋さんは、自分の気持ちに正直ですよね。

 ちょっと子供っぽすぎるかなとも思うけど、うらやましいです、

 私も今、毎日泣きたいです。でも泣けません。

 母はあいかわらず冷たくて怖いし、弟はしばらく病院から出られそうにありません。引きこもっている間に精神を病んでいたらしく、治療が必要だそうです。私は今まで、弟の引きこもりはただのわがままだと思っていたんです。でも違った。病気だったんです。どうして気づいてあげられなかったんだろう?

 何より、修平が今動ける状態じゃないんです。

 急に悪くなって手術したらしくて、成功はしたけど起き上がれないって。

 さっき少しだけ話せました。結城さんがいなくなった話をしたら、

「それもさ、本来いるべき所に戻っただけなんだって」

 と言っていました。幽霊達が本来いるべき天国に行ったように、結城さんも本来やるべきピアニストの道に戻っただけ、こんな田舎で久方さん相手に迷惑ピアノやってる場合じゃないよって。

 それから、

「俺も、本来の場所に戻っただけだよ」

 なんて言うんです。私、それはないんじゃないって言いました。本当なら修平だって健康でこの学校にいるべきなんです。私はそう思います。でも、本人はそうじゃないって言うんですね。

 これから治療やリハビリをしていくそうです。まずは歩けるようになりたいと。

 私も何かしたい。だから絶対、東京の大学に受かります。向こうへ行けば毎日会えるし、私にもできることがあると思うんです。

 新橋さんにはルイーズ・ヘイの『それでも、あなたを愛しなさい』を貸してあげました。この本は昔スマコンに勧められて読みました。スピリチュアルはあまり信じてないんですが、この本は何かを失った、悲しんでいる人のために書かれているので、いいんじゃないかと思ったんです。

 本当に読まなきゃいけないのは私かもしれません。いや、まだ修平は生きてがんばっているんだから、そんなこと言ってちゃ駄目ですね。



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