1.NEXT
思い返すと、今回の人生は最悪の部類に入った。
必死に生き延びた。
生きるか死ぬか、自分の人生の選択はそれしかなかった。
だけどそれもこれも最後。
死は目の前に来てしまった。
「おいアレク!! 目をあけろよ、アレク!! 頼むから死ぬな! 俺をおいていこうとするな!アレク、お願いだから…!」
ああ、あいつの声がする。
何て声を出すんだ。
手を伸ばそうとするが、上手くあがらない。
代わりにうっすら目をあける。
その目には、あいつの顔がぼんやりと映る。
『ごめん。先にいくよ。』
声を出そうとして、かすれた。
まともに伝える事もままならず、それでもなお伝えたい言葉があった。
『また、会おうな』
きちんと言えただろうか。
もう、自分が声を出せているのかどうかも判らない。
だから、せめて、こと切れるその瞬間まで、あいつを見ていたいと思った。
まったくもって、最悪な人生だった。
あいつに出会えた事だけが、唯一誇れる事だった。
あと何回呼吸ができるのだろう?
あと何回瞬きができるのだろう?
少しでも、あいつの顔を見ていたくて、目を閉じたくても我慢した。
ああ、次にもし会えたとしても、その時あいつは自分の事に気付かないだろう。
例え気付かれなくとも、あいつに会いたいと思った。
だから、メニアという名のもとに、強く願う。
あいつと再びまみえる事を。
そして何よりも、どうしようもなく愛しいこの親友が、今もそしてこれからも、多くの幸せを掴む事が出来るようにと。
そこで、意識は、
ブラックアウトした。
最後に見たあいつの顔が、目に焼きついた。