第9話―樹木の成長
黒き剣士ダークドラゴン・ナイトは、ついに始まったオーク軍団の戦いを見ていた。
この軍団の結果が、自らの出番を左右することになるのだから。
黒き剣士の前に、六つの翼と鷲の顔を持つ魔物が現れた。
黒き剣士「我が主。やはりお見えでしたか」
黒き剣士はひざまずく。
鷲の魔物「魔王様は、お前の働きに期待している。異界の人間に遅れを取るな!」
ハハッ、と黒き剣士は叫ぶ。鷲の魔物はその場を去って消えていく。
1000を越えるオーク軍団は、自身の身体に鎧を着け、アックスブレードを振り回す。
ケント、ソウカを含む戦闘のできる人間は前衛で攻撃、かりんや女神ガイア、ゴブリンなど防御の低い者は、後衛となって弓矢や薬草を与えて、町の中を走り回っている。
リリアンの素早さはオークを翻弄した。ライナの弓さばきは、オークに急所を当てて倒していく。ボルカーは大剣を振って、オークを斬っていく。
後衛のゴブリンたちは、弓を使って町に近づけないように矢をゴブリンに放っていた。
ケントは剣を振って、回転斬りをする。
ソウカは詠唱なしの魔法を溜め、数十体のオークを炎、風、水流で消していく。
1000を越えるオーク軍団の数がなかなか減らない。
オーク軍団の兵長「我らが押されているのか?」
オークの下っ端「はい、オーク・ビースト様。数はこちらが依然、圧倒しておりますが、人間とゴブリンの猛攻が止まりませぬ」
オーク・ビーストの甲高い叫びが町まで響く。
ケント「あいつが親玉か。ソウカ、ここを頼む」
ソウカ「了解。一気にやっちゃって!」
ケントはオーク・ビーストの後ろに降り立つ。
オーク・ビースト「お前が異界の人間か?」
ケントは剣を構える。
ケント「どうして、僕が異界の人間だと分かる?」
オーク・ビーストはケントの前に振り返って、斧をドスンと落とす。
オーク・ビースト「この我を倒しても、この大陸の戦禍は止まぬ。全ては大陸の支配者の手中だ!」
オーク・ビーストは斧をケントに振り回した。
ケントは斧を避けるが、オーク・ビーストは片方の拳を握ってケントに殴りかかる。
ケントは盾でオーク・ビーストの拳を受け止めるが、その威力はケントを近くの森に弾き飛ばした。
ケントとオーク・ビーストが死闘をする中、オーク軍団はその数を減らしながらも、町を包囲せんと部隊を散々にした。
人間のかりんやシスター、女神ガイア、ゴブリンたちは町を包囲させないために後方で援護している。
ケントとオーク・ビーストは、今度は斧と剣を交えて戦っていた。
ケントは剣や盾でオーク・ビーストの斧や拳を受け流し、オーク・ビーストに傷を負わせる。
しかし、オーク・ビーストの巨体は小さい傷では足のかかとを落とさない。
オーク・ビーストも素早い動きのケントに攻撃を受け流され、致命傷を与えることはできず、攻撃を止めない。
この死闘に光明が差したのは、オーク・ビーストの巨体の動きで地面が崩れた時だった。
ケントは剣に溜めの斬りを振り、オーク・ビーストの左腕を斬り落とす。
オーク・ビーストは地面に大きな音を立てて転ぶ。
オーク・ビースト「我を殺すか、異界の人間よ?」
ケント「そうするしかない。これ以上、今の争いを続けないために」
ケントはオーク・ビーストに止めを刺す。
オーク・ビーストの死は、他のオーク軍団に攻撃を止めさせた。オーク軍団の数はすでに200にまで減っていた。
オーク・ビーストの死を知った黒き剣士ダークドラゴン・ナイトは、主以外で初めて立ち上がった。
一つの戦いが終わった。敗れたオーク軍団は、ケントの町に新しい住人として、軍門に下った。
小さな樹木は光をまとって、一回り大きく成長した。この光は大陸中に希望を与えた。
オークたちの他に、この光を見た遠方の村人がケントたちの町に走り出した。
―第10話に続く―