第8話―離れた村人が帰る場所
ケントとソウカがこの世界に来る数十年前、周りの4大陸の大都市が滅びる中、この中央大陸の村も、大陸間の交流が途絶え、飢饉が訪れていた。
ほとんどの村人が村を去るという話し合いが行われた。
村の中でかりんの先祖だけが村に残った。
村を去る村人たちは他の町や村を頼って、村を出ていった。
世界を救う英雄が現れぬまま、残った村人、去った村人たちは数十年の時を越すこととなった。
村は町に生まれ変わった。人間やゴブリンが家を持って、村に住むことで、大きな発展を遂げた。
町の周りには高い防壁と鉄の門、4つの監視塔が作り終わり、防御は村の時より格段に上がった。
住む人や魔物の数が増えたことで、食料危機はあると思っていた。しかし、ゴブリンが食料調達を請け負ってくれたので、貯蔵庫も大きくし、3つの貯蔵庫を新たに作った。
合わせて4つの大きな貯蔵庫が出来たので、食料もたくさん備蓄できて飢える心配はなくなった。
ゴブリンの服や装備は、リリアンがメスゴブリンに編み物や機織りを教え、衣食住の衣服も潤った。
衣食住、町の防御が完璧に揃った。防壁の上は、監視塔に繋がる通路があり、通路から弓矢を放てるようになっている。
オークの軍団がまたも迫ってきているのは、今は誰も知り得ないが、1000を越えるオーク相手では、町の外で戦うこと以外なく。町を壊されるわけにはいかない。
町の発展は、この大陸に名所となる建物も作られた。
この中央大陸には、かつて全ての大陸から見えるほどの超巨大な大樹があったらしい。
ケントは小さい木の枝を地面に差し、ソウカは恵みの魔法で一本の樹木に変える。
雨が降り始めた。この世界に来て、雨が降ったのを見るのは初めてだった。
しかし、この雨は足音を消す。何日もかけてゆっくりと歩いているオーク軍団。
フェンリルのガルガは再び、他の魔物との共存をはかるべく、町から出て駆けていった。
ゴブリンたちは町を大きくする以外、建物を増やし住む場所、武器を作る工房、食料の貯蔵庫。色々な建物を作っている。
黒い雨雲が町や大陸を覆い、雷を鳴らす。
女神ガイア「不吉の前触れでしょうか。この大陸に、ものづくりが満たされていく、その一方でモノで戦争も生む」
女神ガイアは手を合わせる。
ケント「そういえば、この世界に来てから、野菜とか食べてないね?」
ソウカ「確かに。まあ、ものづくりそのものが消えちゃったから、農業の概念がないのかも」
この世界に来てから、もうすぐ一月が経つ。雨の降り続く中、雷鳴が聞こえる。
ぬかるみに足を入れて、オーク軍団がゆっくり歩く。森がオークの姿を隠し、雷鳴と雨が足音を消す。
オークの軍団を高みから見下ろす一体の魔物がいた。
???「ダークドラゴン・ナイト。わたしの部下として恥じぬ采配をしているな」
姿が黒い闇に包まれた魔物が、オークの軍団を見ている。
オークの軍団はその存外に気付いていなかった。このオーク軍団もまた、雷鳴と雨でその姿を認識できていないのである。
まもなく、雨が止む。夜明けが小さいながらも、町攻めと防衛の戦争が始まる。
ダークドラゴン・ナイト「あのお方も見ておられるか。もうじき、争いが起こる!」
黒き剣士が高笑いをした。
ケントとソウカの前に、監視塔から報告が入る。オークの軍団がまもなく攻めに来ると。
―第9話に続く―