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【揺花草子。】(日刊版:2020年)  作者: 篠木雪平
2020年10月
287/364

【揺花草子。】<その3184:導火線。>

【揺花草子。】<その3184:導火線。>


Bさん「俗に『ヨーロッパの火薬庫』と呼ばれるバルカン半島。」

Aさん「いやそんな今なお火種が燻ってるみたいな言い方やめて?

    ひと頃と較べれば随分平和だよ?」

Cさん「どのあたりか分かる?」

Aさん「もちろんです。

    東地中海の北東の端、

    アドリア海とかイオニア海とかエーゲ海とか黒海に囲まれた半島ですよね。

    小アジア半島と向かい合う・・・」

Cさん「小アジア半島と言うか、正確にはアナトリアね。

    まあでも、だいたい認識としては正しいんじゃないかしら。」

Aさん「どうも・・・。」

Bさん「この辺りはかつて非常に正常が不安定な地域だったよね。

    歴史的には常にヨーロッパ世界と東方との交差点だった。

    中世期にはオスマン帝国の影響を受けたし、

    近世にはオーストリア=ハンガリーおよびオスマン両帝国に翻弄され

    国民国家として独立するのがだいぶ立ち遅れた地域だった。」

Aさん「ふむ。」

Cさん「20世紀初頭から一次戦前夜の時代、

    この地域に住む人々の民族主義の高まりに乗じたドイツやロシアなど

    大国の思惑が複雑に絡み合い、一触即発の状態となったわ。」

Aさん「むむむ・・・。」

Bさん「そして1914年、決定的な出来事が起こる。

    現在ボスニア・ヘルツェゴビナの首都、

    当時はオーストリア=ハンガリー帝国の都市だったサライェヴォで

    オーストリア大公とその奥様が暗殺されたサライェヴォ事件が

    第一次世界大戦の引き金を引いてしまった。」

Aさん「そうだね・・・。」

Cさん「その後、戦間期から二次戦、そして冷戦後から近年に至るまで

    地域紛争が頻発する地域だったわ。

    割と若い世代の人でも戦争の記憶を残している人が多かったりするからね。」

Aさん「そうみたいですね・・・。」

Bさん「しかしながら今日のこの地域は歴史的にも価値の高い建造物や

    中世の姿を残した都市、美しい自然が溢れ、

    観光地としても非常に人気のある地域なわけです。

    仄暗い歴史と風光明媚な華やかさの同居する

    実に趣深い地と言えるこのバルカン半島。」

Aさん「うんうん。」


Bさん「つい『ガルパン半島』って

    空目しちゃうんだよね。」

Aさん「知らんよそんなん。」


「火薬とか危ないですよ!!」

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