11/17
11
殺された青年には偶然、身寄りが無く、私の企みは上手くいった。
私は全ての使用人を解雇した。
陽子について口外しないように、それぞれにまとまった金を渡した。
それから苦渋の決断を下した。
陽子を地下室に閉じ込めたのだ。
もしも再び陽子が暴走したら、外へと飛び出すかもしれない。
そうなれば、今度は私では対処できない大きな事件になるだろう。
さらなる犠牲者が出るのは避けなければならない。
陽子の気持ちを思うと、弱っている私の心臓はどうしようもないほど痛んだが、他に方法はなかった。
これには妻も同意した。
この判断は結局、正しかった。
青年を殺した1ヶ月後に陽子は暴れだした。
深夜、地下室の頑丈な鉄扉に陽子が何度も体当たりする音で私は眼が覚めた。
しばらくすると前回と同じように陽子は大人しくなったが、私はさらなる対策を考えねばならなくなった。
陽子が鉄扉を破ってしまわないとも限らない。
私は特別、強固な鎖を造らせて、壁に固定した。