表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した最凶毒使いは気ままに異世界を旅する  作者: 葦上 薫
村での生活
9/12

帰る途中で

「・・・」


俺は、家まで残り数10mと言った所で、足を止める。

気配を探った所、隠れているのは7人か。

止まっても出てこないのは気付かれていないつもりだろうか?


「おい、さっさと出て来いよ。気付いていないとでも思ったのか?」


俺が気配のする方へ声をかけると、いくつかの気配の持ち主が驚いたのか、茂みを大きく鳴らした。


「・・・気付いていたか、流石だと褒めてやるよ。」


一番気配を隠すのが下手な青年が尊大な口調で茂みの中から現れた。


「気付かないも何も、気配を隠すのが下手すぎる。魔物と相対すれば、一瞬で気付かれてお陀仏だぞ。」

「なるほど、魔物との戦闘で鍛えられていたって事か。」


話している途中に近くの茂みから矢を撃たれた。

しかし、今この場所にいる奴らの気配は全て把握しているため、矢を射出されるのも分かっていた俺は軽く首をずらして矢を回避する。


「それで?たかが一人を取り囲んで何の用だ?」


青年は自分が囮になって矢で奇襲する作戦だったのか、視認もしていないはずの矢を最低限の動きで回避したことに心底驚いたようだが、すぐに顔を取り繕って再度尊大な口調で話を続ける。


「いや何、今後ライラに近づかないでほしくてね。彼女は、僕のように高貴な人間と共にいるのが相応しい。彼女の美しさは君の様な役立たずには勿体ない」


いきなり初対面の人間を罵倒し始めた青年はその後もいかに自分が気高いか、ライラが素晴らしいかを熱く語り始めた。

対する俺の回答はたった一言だった。


「あっそ。」


罵倒されて怒る訳でも、尊大な態度にムカつく訳でもなく、ただ単に興味なさげに答えた。


「・・・は?」


流石にこの反応は予想外だったのか、青年が一瞬ポカンと呆けた顔をした。


「仲良くしたけりゃすればいいんじゃない?あいつが誰と付き合うかはあいつが決めることだしな。俺は知ったことじゃないよ。」


よく付き合う人間は選べとか言われるが、俺からしたらなぜそんなことを他人から言われなければならないのか不思議でならない。

人がどんな人と付き合うのはその人の自由だ。

例え、その人と付き合った結果不利になることになっても、それもまた失敗の経験だ。次に同じ轍を踏まないための糧に出来るのにその機会を奪うことは得策とは思えない。

実際、前世で里親にあいつとは付き合うなと言われた知り合いは実は外見だけコワモテで中身は誰よりも優しかった人や、行動に犯罪ギリギリがあっても根っからの悪人という訳ではない人も大勢いた。そして、その逆もまたしかりだ。

それに、複雑な現代社会ならともかく、村という小さなコミュニティの中ではそこまで騙すという行為は存在しない。

狭い中では自身の行動はあっという間に広がり、2~3日もすれば最悪誰からも相手されない針の筵状態になる。

そうなれば自分の首を締めるだけなので、馬鹿な真似をする人間はいない。

いるとすれば、村の中で生活していない位の高い人間か町の人間だ。

毎月の税の徴収に来る徴税官は先週来たし、村の村長であるユニープから事前に貴族などが来ることは聞いてないので、恐らくは後者だろう。


「ふっ、そうか。なら、今後一切彼女には近づかない事だな。」

「頭大丈夫かお前?」

「何だと貴様!!」


あまりに頓珍漢な発言をするので思わす素で心配してしまった。

隠れている気配のいくつかが小刻みに揺れているのは日が沈んだ結果肌寒くなったからか、笑いを堪えているかは分からない。


「さっきも言った通り、ライラが誰と付き合うかは本人の自由だ。あいつが俺を拒まない限り俺があいつに関わらない理由は存在しないだろう。話を聞いていたのかお前。」


全然理解していない自称高貴な人に丁寧に解説をする。

すると、青年は肩をわなわなと震わせて俺を睨みつけた。


「多少実力があるといっても、所詮は子供、自分の状況が全然わかってないみたいだな。」


青年がそういって右手を上げた途端、今まで茂みに潜んでいた男たちが隠れるのをやめて現れた。中には帯刀している人物も存在する。


「分かっただろう、痛い目にあいたくなければ、お前は俺の言う事を聞くしかないんだよ。」

「・・・」


仲間が出て来て熱くなっている青年に対し、俺は冷静に周りの人物たちの装備と自身の置かれた状況を分析する。

この中にユニープやブーマを超える腕前をもつ人はいないため、攻撃されても精々蚊に刺された程度の感覚だろう。


「どうした?臆して言葉も無いか?」

「一つ言っておく。」

「何だ?命乞いでもするのか?」


青年はすっかり自分が有利と思っているらしい。


「ここはお前が生まれた町の法律は通じない。村には村の法度が存在して、国だろうと貴族だろうとこの内容には干渉できない。そして、正当防衛で加害者がどうなろうと、この村では誰も助けてはくれないぞ。その腰にあるモノを抜けば、もう後戻りは出来ないということを忘れるな。」

「っ!相変わらず生意気なガキだな!お前ら、やってしまえ!!金は幾らでも払う!!」


威圧スキルを上乗せした俺の忠告に何人かはたじろいだが、男が指示した途端何人かの男が俺に向かってきた。


「悪いな。お前に恨みはないが、少し痛い目にあってもらうぞ。」

「安心しろ、殺しはせん。」


ご丁寧に俺の前で一端止まって得物を抜いて話かけた上で攻撃してきた。

本来の戦闘では真っ先に死ぬだろうに、俺が子供だと侮っているのだろうか?

悪いと思うなら、子供を数人で取り囲んだり奇襲して攻撃なんてするなよとか、なぜたかが都会っ子が美人とはいえたった一人の村の少女にそこまで金を積むのかとかの突っ込みは無視した。

接近してきた男たちは拳闘師と片手剣使いだったが、俺はまず片手剣使いの剣を人差し指と中指で掴んで手刀で根元から得物を壊す。

驚きに硬直している片手剣使いを後ろに突き飛ばして後ろから接近してきた拳闘師とぶつける。

片手剣使いは拳闘師の攻撃の流れ弾を食らい、バランスを崩した二人は仲良く転んで泥まみれになった。


「てめぇ!何しやがる!!」

「何って?抵抗だけど?まさか無抵抗でやられるとでも思ったのか?だとしたら相当な楽観主義者だな。脱帽するよ。」

「んだと!?」


転がった拳闘師が煽られて再度接近する。

俺は、先読みスキルを使用して拳闘師の攻撃の軌道を読み、回避盾スキルを使用して攻撃を回避する。

回避されるとは思っていなかったのか、拳闘師の攻撃は大きく空振りし隙が生まれる。

その隙を逃すことは無く、俺は拳闘師の腹部に重い一発を入れた。


「グフゥ・・・」


拳闘師を黙らせたところで、戦力になりそうな残り4人に目を向ける。

尊大な青年の後ろに弓使いが2人、前に斧使いと短剣使いが一人ずつ。

とりあえず、一番青年に近い位置にいる弓使いへ先ほど壊した片手剣使いの得物を返却する。

投擲スキルを用いた投剣は正確に弓使いの喉元を切り裂き、紅い花を咲かせる。


「なっ!?ば、馬鹿な!?こいつらはランク青の冒険者だぞ!?それがなぜたかがガキにやられる!?」


そのランク青とやらがどれほどの腕前か知らないが、少なくとも俺からすれば全員雑魚でしかない。


「ま、待て!お、俺はそこにいる奴に命令されただけだ!!た、頼むから見逃してくれ!!」

「お、お前!!裏切るつもりか!!」

「当たり前だ!!仲間を一瞬で3人もやられたんだぞ!!そんなことをする奴に挑むなんて馬鹿な真似はしたくねぇ!!命あってこその物種だ!!」

「高い金を払っといてそのざまか!!」


斧使いが俺への説得を試みたため雇い主の青年と言い合いになる。どうやら、ランク青とやらはそれなりに高いレベルだったのか3人倒れただけで既に戦況がカオスと化した。

一応説明すると、先ほど血しぶきをあげた弓使いだが急激な失血と自分の首から飛び散る血液によるショックのダブルパンチで気絶しているだけなため、未だ誰も殺してはいない。先ほど突き飛ばした片手剣使いも拳闘師の拳が後頭部に命中して気絶しているだけだ。


「くるならさっさと来い。ただし、命乞いは無駄だぞ。」


相手の連携が崩れたこの機を逃さないために、俺は威圧スキルも使用して脅しをかける。

ついでに近くの石を拾って握り潰して俺の腕力も見せつけた。

まともな人間ならば石を素手で砕く子供なんて恐ろしくて相手出来ないはずだ。


「ひひぇ~~~!!」

「逃げろ~~!!!」

「あ、おい!待て!!僕を置いていくな!払った分の仕事をしろ!おい!!」


蜘蛛の子を散らすように逃げていく男共へ暴言を吐きながら、青年はその場から動かない。

恐怖で動けないのか、はたまた他にも何か隠し玉があるのか。

どちらにしても、俺には関係のない事なので、さっさと家へ帰ろう。


「隙ありぃ!!」

「どこに?」


早く家へ帰りたいのに、青年は俺が背を向けた途端、持っていた短剣で斬りかかってきた。

先ほど自分より強い冒険者が目の前の子供に打ちのめされたのを覚えてないのかね?

あれか?鶏よりも記憶力が低いの?

黙って斬られる訳にも行かないので、俺は後ろを振り返ることもせずに空間把握スキルで短剣の位置を割り出し、右手の人差し指と中指でつまむ。

日本の指で固定した所に手加減なしの全力威圧を発動させる。


「ヒイッ!?」


ドサっという音と共に青年が気絶して地面へ倒れ込む。

彼がどれほどの恐怖を感じたか知らないが、人を殺そうとして怪我で済むのなら、安いもんだろう。

最も、次襲われれば怪我では済まさないけどな。

一応、置いていかれた弓使いの傷口を持っていた回復薬で止血して、俺は気絶した青年の襟首を掴んで引きずりながらさっさと家へ帰った。


俺は家へ帰るなり、村長であるユニープへ襲撃されたことを報告した。

少なくとも、村の青年ではないため、何をしでかしても極刑になることまではないが、下手をすれば今後一切の村への干渉が禁じられるだろう。

村の法度では襲撃が起こった際に被害者が加害者をどうしようと責められはしない。

ではなぜ俺が彼を生かしたかというと、万一また彼の様な輩が金に物を言わせて襲撃してくるかもしれない。負けることはないだろうが、それでも一々対処するのは面倒なので、一度晒し者にして俺へのちょっかいが出せなくさせることにしたのだ。

そこら辺をユニープに相談した所、それならば玄関の柵に丸一日縛り付けることを進められたので二人で縛りつけることにした。

途中で青年が起きて何か喚き始めたが、うるさかったので再度威圧スキルを手加減なしで使用した所、距離が近かったからか今度はお漏らしをして気絶してしまった。また、夜中に再び起きた時を考えて猿ぐつわを括り付けたのが功を奏したのかその晩は騒音は少く、ぐっすりと眠れた。

これ以降、投稿がまちまちになります。申し訳ございません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ