(;´・ω・`)<カンベンシテ…(゜皿゜メ)o〆
翌日、俺は家のベットで目を覚ました。
蛇にかまれた腕にキバの感覚が無いため、引っこ抜かれたのだろう。
しかし、未だに腕を蝕む感覚が存在し続けているため、解毒はされてないのだろう。
「あ、フィンが起きた!」
俺を看病していたのか何故かライラが俺の部屋にいて真っ先に俺の意識が回復したことに気付いた。
「おじさ~ん、おばさ~ん!フィンが起きた~!!」
ライラが両親を呼びに行った。
昨日、少し怖がらせるようなことをしてしまったため、苦手意識が植え付けられていないか心配だったが、杞憂だったようだ。
「おう、やっと起きたか。お前も無茶するよな・・・」
「ごめん・・・あれ以外の方法が思い浮かばなくて・・・」
「ま、結果的に生きてたんだからクドクド言わねぇが、今後は止めてくれよ。心配する身にもなれってんだ。」
「はい・・・」
説教とは言えないが、忠告が耳に痛い。
「フィン、腕はどう?一応回復薬を飲ませたけど、痛みはある?」
回復薬?今までそんなものを飲んだことは無いが、体が癒されている感覚は無い。
「お母さん、それ飲ませたのっていつ?」
俺は、未だに上手く回らない呂律を最大限回して母親へ質問する。
「え?飲ませた時間?え~っと、フィンがお父さんに連れられて帰ってきた直後だから・・・半日くらいかしらね?」
半日・・・飲まされた回復薬の効能が低いのか、痛みは先ほどから一切引いてない。
「にしても陸鰻の胴体踏んで噛まれるなんてお前も運が悪いな。お前が頭部を潰した陸鰻の体色を見たが、ありゃあ流血鰻だ。」
「流血鰻?」
「ああ、毎年何人かは噛まれる。手当てが遅れると死ぬこともある。今回は回復薬を早く飲ませたから大分痛みは引いてきただろう?」
話を聞く限り、ここでは蛇を鰻というらしい。
蛇の名前からして、使っている毒は出血毒か?しかし、それにしては痛みが低い。
前世において俺は出血毒を流されたことも蛇に噛まれたことも無いが、記憶が正しければもっと痛みが強く、腕が腫れるはずだ。
しかし、今の俺の腕は痛みこそあれ、腕が腫れている様にも見えない。
もっとも、包帯が真っ赤に染まっているため出血自体はしているのでこのままでは失血死しかねん。
「フィン、死なないでよ。私、まだお礼してないんだから。」
「ああ、うん・・・」
ライラが心配して励ましてくれたが、今の俺は自身の腕に対する疑問を考えていて生返事をしてしまった。
それが幼い彼女にどう見えたのかは分らんが、ライラが帰宅する際に悲しい顔をしていたのはよく覚えている。
あれから、三日ほど経った。
未だに腕を蝕む感覚は存在するが、日に日に痛みは引いて来ている。
しかし、問題は腕の状態ではなかった。
ここ3日ほど毒の影響は消えておらず、ずっと出血は続いていた。
蝕む感覚は引いても出血が収まる感覚は無く、肉体の30%は優に超える量の血液が流れ出たはずだ。
それなのに、失血死する気配は存在しない。
しかし、血液が減ったことによる思考能力の低下と強い動悸、めまいや頭痛に悩まされている。
効果が低いと親が何度か回復薬を飲ませてくれたが、最初の方は出血量は収まったものの次第に効果が低くなってゆき、次第には全く効かなくなった。
「どういうことだ、これは?」
一向に毒の影響が切れない俺を不審に思った両親が村の薬剤師に診せたりもしたが、原因が分からないと匙を投げられた。
日に日に腕を蝕む感覚が引いているのは事実なので、とりあえず出血に気をつけて何日か様子を見ることにした。
「フィ~ン!遊びに来たよ~!!」
あの日から、何故かライラが俺の家に来ることが多くなった。
俺は日常生活をおくるのに支障のない程度に回復したので、今はとりあえず暇つぶしに勉強をしていた。
この世界の文字は英語や日本語と違って文字が少し多く、トリッキーな書き方をしていた。
例えば「おはようございます」、「いただきます」と書くためには以下のように書く
「pjsupihpxso,si」、「oysfslo,sdi」
何故アルファベットがこの世界に存在するか疑問であったが、考えてみれば俺のような転生者が俺だけとは限らないため、そこから教わったのだろう。
書き方に関しては長い歴史の中で変化したまたは、書き方の違う世界から伝わったかの2通りの可能性があるとしか今は言えない。
確かめるすべも存在しないしな。
機会があったら調べてみよう。
「あ、フィンお勉強?修行はお休み?」
「おいおい、この腕で修行出来ると思うか?というか、修行にかこつけてお前のお父さんが剣を引き抜く状況しか思い浮かばんのだが・・・」
俺がライラを叩いたことが原因だとは思うが、俺が帰った後も何度も俺に切りかかってきた(一応自重したのか木刀を使用しているが・・・)。
一度襲撃された時に運よくユニープがいたため、守ってくれた。
それ以来ユニープは出来る限りブーマの襲撃を防いでくれていたが、ユニープのいないときは左手を庇いながら村でもトップクラスの実力を誇る剣士の相手をしなければならなかった。
ブーマも腕が急所なのは分かっているのかあからさまに狙うことはしなかったが、それでも剣を本気で振うため子供の腕力的には重くてかなわん。
結局は左手以外をボコボコに叩きのめされてグロッキーな状態をソフィアかユニープに見つかって自分がボコボコにされるのだが、それでも懲りずに襲撃してくるのは勘弁してほしい。
最も、今は先ほどユニープと切り結んでいたためしばらくは問題ないだろう。
「あ、算数?」
「まぁ、そんなところだな。一応加算減算乗算割算は一通り覚えた。」
「・・・え?」
「ん?どうした?」
「嘘・・・私まだ加算と減算しかできないのに・・・」
確か今、ライラって5歳だよな?
一瞬、前世の自分の基準でそれくらいできるだろ?と思ったが、前世の俺は学習セットの「チャンス」をし続けていたということと、元々が大学卒業生だったことを思い出したため基準がおかしいと考え直した。
というか、自分が乗算割算も出来るようになると加算減算を覚えた時を忘れてしまった。
俺も最初は大分苦労したんだよな・・・
後々知ったことだが、算術はスキルとして存在する位覚えにくい術だ。
五歳で加算減算出来ること自体は大分頑張っているのだろう。
「乗算と割算は一度覚えれば簡単だぞ。教えようか?」
「う、うん、お願い・・・」
とりあえず、前世で読んだ本の知識で彼女に乗算と割算の解き方を教える。
さすがに九九を一度に覚えることはしなかったが、1日で3の段まで暗記したため、単純に考えてあと3日で九九を覚えられる速度だ(因みに、俺は丸一年かかった)。
彼女も彼女で十分天才なのだろう。
その後、俺の家から中々帰らないライラに対し何を勘違いしたのか、ブーマからの襲撃の頻度が上がったのは別の話。




