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転生した最凶毒使いは気ままに異世界を旅する  作者: 葦上 薫
村での生活
5/12

逃げるんだよ~!!ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘

「ライラ、止まれ」

俺は、ライラを呼び止め、後ろから向かってくる気配を探る。

村まで残り数kmといったところだ。既に夕日も沈み始めている。

数は4、恐らく狼だろう。

「?どうしたの?」

「とりあえず、木登りを始めよう」

「はい?」

先ほどまで早く帰ろうと言っていた俺が、突然木登りをしようといったことで、ライラは素っ頓狂な声を上げた。

「いいからいいから・・・」

「ちょ、フィン?」

近くにある手ごろな気の上に登り、辺りを見回す。

山菜は、とりあえず俺が上まで運んだ。

「ちょっと、説明してよ!なんでいきなり木に登るなんて、モガ・・・」

俺は抗議してくるライラの口を塞ぎ、耳元で囁く。

「静かに、落ち着いて聞いてくれ。多分、狼に接近されている。数は4つ、俺達の脚じゃ、追いつかれる。俺ならお前を逃がす事位は出来るから、山菜を置いて急いで村まで帰ってくれ。」

ライラは狼が接近していると言われ、身を固くした。

大まかに測ってみた所、狼の速度は俺の2倍だ。

そんな足の速い生き物からライラが逃げ切れるとは思えない。

しかし、俺ならば木々を伝って挑発スキルを連発しながら狼の注意を引ける。

「ぷはぁ!」

「時間が無い、隠れてくれ。野生動物は察知能力が高いからな。」

俺はライラの口を塞いでいた手を解き、隠れるように促す。

そろそろ、狼たちと遭遇する頃合いだ。

「で、でもフィンを置いていける訳!痛、」

俺を置いていけないと言うライラに、俺は手加減をした平手打ちを頬に当てる。

僅かに頬が腫れて、申し訳ない気持ちになった。

この子の性格からして、仲の良い友人を捨てることなど出来ないのだろう。

「四の五の言わずにやれ。これが、二人が助かる可能性の一番高い方法なんだ。暗くなれば、闇の中、村へ帰る方法が分からなくなる。」

彼女をケガさせたのは勿論ワザとだ。

後々にブーマに殺されるかもしれないが、愛娘の顏に腫れがあるのだ。親馬鹿の彼が、放っておくわけもなく、すぐさま事情を聞くだろう。

後々殴られる覚悟は十分している。

「ウォウ!!」

「バウバウ!!」

狼が足元の木々に集まる。

猫型の生き物ではないため、彼らに木々を上る能力は無い。せいぜい、獲物が下りてくるのを待つ程度だ。

「俺が奴らの注意を引いてから、50数えて村の方へ向かうんだ。そして、父さんやおじさんに事情を話せ。後でお前からの罵倒も甘んじて受ける。」

自分だけ逃げる事に抵抗のあったライラだが、足元で唸り声を上げる捕食者の恐怖に抗えず、コクコクと首を縦に振った。

「それじゃ、助けを待ってるぜ。」

そう言い、俺は枝を蹴って山菜を積んだ籠を持ちながら高く跳躍した。

「こっちだ!犬っころ!!」

俺は挑発スキルも上乗せし、意識がこちらへ向いた狼たちへ籠を投げつける。

それにより、4体全ての狼のターゲットは俺に向いた。

挑発スキル自体は4歳の頃に存在を察知した。

地球でいうドッチボールのような遊びを子供たちとしていた時に縮こまっているライラへボールが当たらないように注意を引きつけた。

その後、何度か同じようなことが起こり、比較的自分の意志で起こせるようになったため、俺はこれを挑発スキルと呼んでいる。

俺は猿もかくやと言わんばかりに木々の間を跳躍し、ライラがいる木々から少しでも狼たちを遠ざけ始めた。



「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

村へ向かって一目散に走る。

怖い狼達は全部フィンが引き付けてくれた。

私は、足が速い方じゃないしどんくさいけど、全力で村へ向かって走った。

きっと、彼は足の遅い私を助けるために囮になってくれたんだ。

彼の稼いでくれている時間を無駄にしないためにも、私は悲鳴を上げる足に鞭を打って村への道を急いだ。



どれくらい時間がたっただろうか?

1時間?2時間?

疲れてただひたすらに村への道を急いだ私にとっては、一秒が永遠にも感じた。

そうして、村の入り口が見えた。

既に息が上がっていて呼吸が苦しい。

やっとこさ村へ入って、真っ先にお父さんのいる家へと向かった

道中、私の頬の傷に驚いた人たちが声を掛けてきたが今はそれどころではない。

「お父さん!!」

家へ着いた途端、私はお父さんの事を呼んだ。

私の事に気づいたお父さんが私の頬の傷に気づいて驚愕の声を上げた。

「ライラ!?どうしたんだその傷!!」

私は、お父さんの剣幕に押されてしまい、一瞬黙ってしまった。

「こ、これは・・・フィンに・・・」

「アイツか!!」

お父さんが詳しい話も聞かずに自身の得物を持って外へ出ていこうとする。

そこで、偶然にもフィンのお父さんが家に来たため、お父さんが立ち止まる。

「うぉう、ア危ねぇ・・・どうしたんだよ・・・」

手に幾つかの野菜が握られていたため、おすそ分けに来たのだろうか?

「お前の息子が俺の愛娘を傷物にしたんだよ!!」

お父さんがそう叫んだとたん、フィンのお父さんが私を見て目を見開いた。

「うぇ!?ど、どうしたんだい、ライラちゃん、その傷・・・」

「フィ、フィンが!フィンが!!」

今にも家を飛び出そうとするお父さんをフィンのお父さんが止めながら上手く言うことが出来ない私の話を聞いてくれた。



「ハッ、ハッ、フッ!」

俺は狼からの追跡から逃げながら木々を跳躍し続ける。

挑発はここしばらく使っていないが、狼は俺だけになったターゲットを逃がすつもりはないようだ。

子供らしい軽やかなステップで木々の間を跳躍し続ける。

道中にこっそり石を入手しては狼に投げつける。

大した威力は無くても剣聖くらいにはなるし、当たり所が悪ければそのまま足止めも出来る。

しかし、比較的順調に進んでいたため俺は着地点への注意が疎かになっていた。

「ギュム」「ん?うあ!?」

何か柔らかいものを踏んだと感じた途端、足元が上下に揺れ始め、俺は地面へ落とされた。

「シャアアアァァァ!!」

地面へ落下した途端、大きな長いソレが俺を喰らおうと襲い掛かってきた。

先ほど踏んだのはこいつの胴体だろう。

「くっ!」

俺は、ギリギリに避けながら大蛇の攻撃を躱す。

しかし、死角から胴体を用いた強い打撃を加えられ、地面を転がって大きな岩にぶつかった。

「カハッ・・・」

胴体を踏まれて怒り心頭なハンターがその致命的な隙を見逃すはずもなく、その鋭い牙を俺の左腕へと突き刺した。

「あああ!!!?」

俺は咄嗟に腕を振って、蛇を放した。

牙が数本腕に突き刺さったままだが、後で引き抜くしかない。

今はそれよりもどう対処するかで頭を悩ませていた。

蛇の毒の種類には通常2種類存在し、麻痺毒と出血毒が存在する。

先ほどの蛇が一体どのような種類の蛇かは知らないが、どちらの毒を使っていても今の俺には致命的だ。

麻痺毒が体中に回れば、俺を狙う狼にも蛇にも捕まりアウト、出血毒だと、血が止まらずたれ続け狼に居場所を教えるわ貧血で思考も行動もままならなくなりアウト。

とりあえずは目の前の蛇だ。

狼と違い、蛇は木々に登った所で何の意味もない。

対処する優先順位としては、蛇の方が圧倒的に高い。

近くの石を適当に引っ掴み、再度俺へと牙を突き立ててきた蛇の攻撃を躱し、口元の胴体を左手で掴んで地面に叩きつける。

死にそうなくらい痛いが、まだ左手が使えない訳ではない。

俺は地面へ叩きつけた蛇の胴体を踏み、その蛇の頭部へ右手に持った石を思いっきり石を叩きつけた。

数秒蛇は痙攣をしたが、やがて動きが完全に静止し、絶命したと悟る。

そういえば、この蛇狼たちの餌にすれば、逃げられないか?

ふとそう思った清だが、次の瞬間再度渋面を作った。

自身を追っていた狼達が既に100m以内の距離に接近していたのだ。

蛇への対処に気が向いてて気配を探るのが疎かになっていた。

(マズイ、早く木に登らないと・・・)

急いで手近な木に登ろうとする清だったが、何故か思考がまともに出来ず、視界がぼやけ始めた。

距離感も何処か曖昧になってきた。

(あ、これちょっとマズいかも・・・)

現在清に出来る手段はほぼない、石を使って牽制をしようにも、その石さえうまく掴めなくなってきた。

既に足もフラフラで、立っていることさえままならない。

狼との距離が残り数mになった時、流石の清も死を覚った。

狼の白い歯が清の体を喰らい尽くそうと大きく開かれた時・・・



「どっせぇぇい!!」

清のいる木の横から、ユニープが大剣を手にして助けに飛び出してきて、

拳を横に薙ぎ払って一番近くにいる狼を吹き飛ばした。

「うりゃ!」

仲間が攻撃されたことに怒った他の狼がユニープへ攻撃を仕掛けるが、短剣を持ったブーマが間に入って狼の首を正確に切り裂く。

普段会うたびに口喧嘩を始める二人だが、こと戦闘においては息の合った連携をする。

連携なら我々も負けてないとばかりに、二方向からユニープがへ狼が迫り、同時の攻撃をしかける。

「舐めるな!!」

しかし、ユニープは先に接近する方を瞬時に判断し、再度横薙ぎに払って同時に2体の狼を葬る。

村一番の剣士コンビにたかが狼が叶う訳もなく、ものの数分で狼は全て討伐された。

しかし、本当の悪夢はこれからだった。

「ハァアアア!!」

何と、ブーマが清へと攻撃を仕掛けてきた。

清は現在、毒で肉体が弱っているため、回避行動すらできずにまともに食らってしまった。

「ガ八ッ・・・」

攻撃をされた俺は背にしていた木々に強く叩きつけられる。

「おい!何している!」

「うちの娘が受けた苦痛をこいつにも味わわせただけだ。」

「今はそれどころじゃないだろ!見て分らんのか!出血が止まってないのに、さらに血を失わせるようなことをするな!!」

木に叩きつけられた衝撃で声を出すことが出来ない。

そろそろ、意識が飛びかけてきたため、限界も近いだろう。

俺を見て慌てたユニープが俺を背負った辺りで俺の意識は途切れた。


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