保安官との話し合い
この話を投稿後、大学受験の勉強のために最低でも2年ほど投稿を休止します。
中途半端に止まってしい大変申し訳ございません。
ステータススキルで自身のステータスとスキルを確認した次の日、俺は昨日の襲撃者を引き連れて村の保安所へ向かっていた。
「放せ!僕は由緒あるアレクサンダー子爵家の次男だぞ!!おい!聞いているのか!!」
襲撃者が暴れながら何か言っているが、痛くも痒くもないので全て無視した。
現在彼は縄でぐるぐる巻き縛られて俺に肩に担がれて運ばれている。
あ、そういえば・・・
「なあ、あんた・・・」
「貴様、さっさと僕を下ろせ!!今なら四肢をもいで奴隷に落とすだけで許してやる!さぁ、さっさと下ろせ」
「そんなどうでもいい事より、あんた名前何て言うんだ?今まで聞いていなかったから調書取るのに手間がかかるんだ。」
「ど、どうでもいいだと・・・」
その後も耳元で罵詈雑言が響き渡ったが、全てスルーし続けた所、叫び疲れたのか襲撃者は急にぐったりと項垂れた。
「アルバート・・・アルバート・アレクサンダーだ。」
俺はアルバートを背負ってえっちらおっちらと保安所へ再度向かった。
「ちわ~っす、ヘクターさんいる?」
村唯一の保安所にはヘクターなる保安官が存在する。
正直言って俺は彼が仕事をしたことがあるのか?と思う位普段の彼は仕事をしていない。
保安官の仕事は村の中のパトロールと揉め事の仲裁、そして村に対して危害を加える存在の排除だ。
彼は腐っても保安官なので、こういう状況では重宝されている。
「あ~・・・?なんだフィン君か。」
うっわ、酒くせぇ・・・朝っぱらから飲んでんのかこの人?
「おやすみ~・・・」
「ちょいちょいちょい、二度寝しないの。たまには仕事しなさいよ。」
「良いんだよ~・・・俺は一生遊んでてもお金が勝手に手に入るから問題ニャ~イ。」
そういって、彼は近くに置いてあった酒瓶をごくごくと飲み始めた。
このアル中め・・・
「ぷはぁ・・・一生遊んで暮らしたい・・・」
「何ダメ人間みたいなこといってるんですか・・・ほら、仕事持ってきたんだからしゃきっとしてください。」
「フィン君、君俺が仕事を自主的にしないダメな大人みたいに見てるかもしれないけど、一応俺の仕事の大半奪ってるの君だからね?」
そう言われるとぐうの音も出ない。
村に対して危害を加える存在とは、魔物も含まれる。
俺とライラはお互いの腕がどれくらいあがったかを判断するためにどっちが多くの魔物を討伐出来るかないしはどっちが先に魔物を討伐出来るかで勝負したりしている。
俺の数少ない楽しみの一つでもあるが、彼の仕事を奪ってることには変わりはない。
「それならば、あなたが仕事しないでお金手に入ってるのは僕のおかげですね。四の五の言わず、さっさと働いてください。」
だから、さっさと開き直って満面の笑みで厄介ごとを押し付けた。
「・・・この保安官に任せて大丈夫なのかお前?」
そう呟くアルバートの疑問に対し清は無言の沈黙で返答した。
素行に問題があるからとはいえ、現在頼れる保安官は彼にしかいないのは事実なのだから・・・
「え~っと、とりあえず君達、名前と職業、を教えて。」
「フィン、家名はない。職業は・・・何でも屋かな?」
「アルバート・アレクサンダー、ディオース総合学園在学の学生だ。」
「アレクサンダーって、あの堅物で有名な子爵の?まずいでしょ君」
「まずいって何だ?俺は襲われたから護身しただけだぞ。誰も殺しちゃいないし、正当防衛だ」
「いや、フィン君じゃなくて、彼が。アレクサンダー家っていうのは、厳格で有名でね。正当な理由なしに他者に危害を加える事を禁止しているんだ。噂では使用人にもそれを徹底させているって有名でね。フィン君がどんな理由で襲われたか知らないけど、一人に対して複数人で襲うなんて、現当主が耳にすればカンカンに怒ると思うよ・・・」
それを聞いた途端、アルバートの顏が真っ青になった。
「で、アルバート君は何でフィン君を襲ったの?」
「そ、それは・・・その・・・」
「俺がライラと一緒に行動しているのが気に食わなかったらしいよ。」
「な!?き、貴様!!」
アルバートが俺を睨みつけるが、知ったことではない。
元々、自分から蒔いた種だろう。
「それじゃあ、アウトだね~・・・え~っと・・・傷害に関する刑罰は~っと・・・」
そういって、ヘクターさんは奥の資料室から六法全書を取り出す。
「あ~・・・被害者には加害者に対し金貨20枚の請求権が存在するっと・・・」
「な!?そ、そんな大金・・・」
「あのね君、普通どんな言い分があろうとも一人に対し複数人で襲い掛かるなんて、下手をすれば奴隷落ちよ。それが貴族という地位がある程度護った結果金銭によって解決できるんだよ。そこら辺分ってる?」
「し、しかし・・・」
ヘクターさんとアルバートが何か言い合っているが、正直言って俺は金貨20枚というのがどれほどの大金か分からない。
村の中では基本的に物々交換で何とかなっているので、貨幣が介入する必要があまりないのだ。
もっとも、相場が分からなくても貨幣に金が使われている時点で高額な価値がある位は理解できる。
「なぁ、一つ質問なんだが、金貨20枚って高いのか?」
俺が質問すると、言い合っている二人が同時にこちらを振り向いた。
「貨幣の価値も知らんのか!これだから平民は・・・」
「あ~・・・そういえば、フィン君は基本的に貨幣っていらなかったねぇ。そもそも、こういう辺鄙な村では物々交換が主流だったか。分かりやすく言うと、王都で1カ月は働かなくて生活できる水準かな?それ以外でも貨幣を扱っている都市だと半年は働かなくても生活できるね。」
ふむ、となると、金貨20枚の価値を30万円相当と仮定した場合、金貨1枚の価値は1万5千円ってところだな。
「それ、村の中では使わないんだけど、別の物に出来ない?」
「出来るよ。コレには『被害者が納得しなければ、罰金金額に相当する別なもので支払いをしてもかまわない』って書かれているしね。ま、とにかくは一度王都へ向かって、アレクサンダー家と話し合ってからだね。」
ヘクターさんはそういって六法全書をヒラヒラと振った。
「王都へ向かうには、俺も一応同行するよ。子供二人で向かわせるには遠すぎる距離だし、何より事件の当事者同士だけで行動させるなんて出来ないからね。それに、俺が言った方が何かと便利だし。」
「便利って?」
「フィン君、まだ身分証持ってないっしょ?王都みたいにおっきな都市では何かしらの身分証が必要なんだよ。俺と一緒なら保安官って役職上何人か一緒に同伴することが出来るんだよ。最も、事件の当事者とその身内だけ可能なんだけどね。」
冒険者ギルドなどで身分証を作成するためには前提として成人していないといけない。
この世界の成人年齢は15歳だが、現在の俺はまだ10歳なので身分証の作成は不可能だ。
「なるほど・・・」
「それに、事態を加害者の身内や司法機関に報告する際に形だけとはいえ保安官が同行すれば比較的スムーズに事が進むんだ。俺が行かなかったら、看破スキルを持っている神官とかの前に引きずり出されて長々と神様の前で『私は嘘を言っていません』って誓いを言わされるよ。」
「それは便利だね。」
確かに、それだけ便利な機能がついているのならヘクターさんと一緒に王都に向かうのもアリだな。
早速王都への旅路を話し合おうとしたら、隣から待ったがかかった。
「おい貴様ら!私はまだ金を払うなど言ってないぞ!!」
どうやら、彼はまだ自身の非を認めていなかったようだ。
「はぁ、君ね、いい加減大人しく従ったら?既に成人でしょ?」
「五月蠅い!私は悪くない!!そこの平民が夜道で急に襲ってきたんだ!!」
どうやら、彼は相当金貨20枚を払いたくないらしい。
それとも、先ほど言っていた厳格な父親とやらが怖いのだろうか?
どちらにせよ縄でぐるぐる巻きにされた状態で腰のあたりから体を振り回して必死に大声でわめいているする姿は哀れを通り越してどこか嗤いすら浮かんでくる。
「そもそも、何で君はこの村に来たの?昨日の夕方に村で宿を取った後に護衛に連れていた冒険者とどっか向かってたのを見たけど、彼らはどうしたの?」
「だから!そこの平民に襲われて全員殺されたんだ!!」
「殺されたんなら、死体はどこ?そもそも君がその主張を通したいならどちらにせよ一度王都へ向かう必要があるよ。自分の言い分が間違ってないっていうなら看破スキル持つ神官の前で洗いざらい言えば?何も後ろめたいことがないならば出来るでしょ?」
「うぐぅ・・・」
ヘクターさんのマシンガントークによって一瞬でアルバートは押し黙った。
その後も何度か突っかかってきたアルバートだが、結局は『自分に非がないならば王都に向かって神官の前で堂々と話せばいい』というヘクターさんの言い分に押し黙ってしまった。
結局、その2日後、俺とアルバート、ヘクターさんは食材や素材を買いに来た商隊の馬車に同行させてもらって王都へ向かうことになった。




