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第二十一話 パーティの名前をつけよう

「それではパーティ結成を祝ってカンパーイ!」


 ジョッキを掲げるのは狐のお面。お前まだそれを外さないのか。


「「「カンパーイ!」」」


 メンバーが一斉にグラスを打ち合わせる。


 アンヘレスはお面を半分ほど上にずらすと一気にゴクゴクと飲み干し、


「ぷはー旨い! やっぱりダンジョンのあとは冷えたエールよね」


 と言って、ジョッキをドンとテーブルの上に置く。


「お前はどこのオッサンだ」


「あ、前が見えない」


 お面の位置を元に戻すアンヘレス。なんか少しずつキャラが崩れてきたような。こっちが本性か?


「飲むなら、いっそお面を外せばいいだろうに」


「私、これ結構気に入ってるの! それよりもルイス! なんで乾杯しないのよ」


「兄貴は恥ずかしがり屋だか――。いってぇえ!」


 テーブルの下からブーツのつま先で脛を蹴ってやった。誰がそんなことで照れるか。杯を掲げる気になんぞならん。俺はむしろシッポリ飲む方が好きなのだ。


 あ、ジュースの話だよ。未成年は飲酒したら駄目だったからね。過去形なのはこの世界では飲酒に年齢制限がないからだ。ちなみにアンヘレスはエール。レオーラは赤ワイン。他の三人はフルーツジュースだ。


 今度一人で晩酌に挑戦してみよう。


「今日は思った以上に稼げましたね」


 銀貨を手に握り締めるアクアはずっと笑顔だ。


「確かに。やはり下層まで降りると違うな」


 ギルドポイントはパーティ全体で3,000 pt。五人で割っても一人頭600 ptと昨日の四倍だ。


 金も一人頭 46,000ギル、銀貨四枚と銅貨六枚になった。日本円にして一日で四十六万円の稼ぎ。命を賭けているとはいっても割が良すぎる。


「ほんとウハウハよねー」


「そうですわね」


 いや、お前らさっき一本五万ギルのMP回復ポーション飲んできただろ。赤字だよ赤字。


「やっぱりアンヘレスさんの魔法のお蔭ですね」


「もう! アクアちゃんったら! 照れちゃうじゃない。もっと褒めてもいいよ!」


 それは否定しない。広範囲殲滅魔法があるから短時間で一気に稼げているのだ。お馬鹿だから俺は褒めてあげないけどね。


「お待たせしました。当店一番人気のステーキメガ盛りコースです」


「おおお!?」


「うわぁぁああ!?」


 犬……じゃなくて狼獣人の兄妹のボルテージが最高に高まっていた。


「あらあら、今日も一段と高いですわね」


 まず、器がデカい。直径八十センチほどもあった。テーブルの上のスペースが皿だけで埋まるほどだ。そしてそこにピラミッドのように積まれた肉、肉、肉……。向かいの人の顔が見えない。


「これすごいね! 階層によって肉の種類や部位が違うよ!」


「なんか見ているだけで胸やけしそうだ」


 肉なのに階層とかおかしいだろ。


「なあ、兄貴……」


「ルイスさん……」


 二人が身を乗り出して俺を見ていた。尻尾が激しく左右に揺れていた。ん? お前ら何しているんだ?


「ねえ、ルイス。あまり我慢させるのは可哀そう」


 え? おれ待ちなの?


「よ、よし。食べてもいいぞ」


「「わぉん!」」


 いや、お前らやっぱり犬だろ。


 待ってましたとばかりに二人は肉に手を伸ばす。ほんとに素手でだよ。レッドは気にならないんだけど。人が変わったようなアクアを見るのが辛い。


「お、うまい……」


 赤味のステーキ独特の旨味が凝縮されている。通常だと硬くなるはずの肉だがむちゃくちゃ柔らかい。レアならわかるけど、中までちゃんと火が通っているのにも関わらずだ。


「ああ、いつ食べても、この店自慢の魔結晶焼きは絶品ですわ」


「なんだそれは? 肉の中に魔結晶が入っているのか?」


「違いますわ。魔結晶から発生する熱でじっくりと時間をかけて焼いているのですわ」


 なにその炭火の遠赤外線焼きみたいな焼き方。


「でも、魔結晶使ってるってことは結構高い?」


「いえ、大皿一つでたったの二万ギルですわ」


「ほんと安いわね!」


「高すぎだろ!」


 俺の宿代にすると四十泊分じゃねーか!


 あまりの値段にアクアの手が一瞬止まった――。


 しかし、「肉なら許す」と呟き、再び黙々と食べ始めた。


「あ、そうだ。ルイス」


 思い出したかのように両手を合わせるアンヘレス。


「どうした?」


「パーティの名前どうしよっか」


「そんなの必要なのか」


「もう、今日申請した時の話忘れたの! 三日後までに名前を登録してくださいって言われたじゃない」


「《ブランク》でいいだろ」


「それって単なる空白じゃない。ちゃんと考えてよー」


「《兄貴と頼りになる仲間たち》!」


「はい、却下」


 筋肉がテカったお兄さんたちが集ってきたらどうするんだよ。ああ、そういえばレッドの兄貴呼びがいつの間にか定着してしまった。これが既成事実というものか。


「《伝説の勇者たち》は如何でしょうか」


「却下。盛りすぎだ」


 俺は目立ちたくないんだよ。


「では、《プリンセスナイト》はいかがかしら? これなら盛ってない――」


「レオーラ!?」


「アンヘレスは他になんかないのか?」


 うん、スールする所だ。俺には聞こえなかった。あら残念。


「え!? わ、わたし? うーん……。あっ! 《ワンちゃんと狐の大冒険》!」


「俺は狼だ!」


 レッドが牙を剥く。


 あれ、アクアは反論しないのか?


 彼女の方を見るといまだ黙々と貪り食ってました。もう、お肉しか見えてないようだ。


「やっぱりここはリーダーのルイスが決めて」


「俺はそんな役職についた覚えは無い」


「いいからいいから。早く名前決めてよー」


 なんて我儘プリンセス。おっと、今のは言葉の綾だぞ。


「《もうすぐ解散します》これでどうだ?」


「「「却下!」」」


「もう、真面目に考えてよ」


 いや、結構マジな願望だったんだけど。はあ、なんにしようかな……。ああそうだ。ここは定番の名付け方でいくか。


「《ララル》でどうだ?」


「それってどういう意味」


「みなの頭文字をとって並べたんだよ。《RARAL》だな」


「うーん。いまいちなネーミングだけど、それにしよっか」


「あまり強そうじゃないけど、兄貴がそういうなら」


 お前ら……。


「わたくしは良いと思いますわ。今の時点でしっくりくるネーミングは既に何らかのイメージが存在するってことですわ。わたくしたちは新たな伝説を作るのですから。これからこの名を広めて行きましょう」


 勝手にハードルを上げないでくれ。やっぱり《もうすぐ解散します》にしようよ。


「ルイスさん!」


「おお、アクア! なにか妙案が?」


 満を辞して我がパーティの良心が口を開いた。知らずのうちに期待が高まる。


「お肉」


「へ?」


「さっきのメガ盛りお代わりしていいですか?」


 最初から最後まで彼女にはお肉しか見えていなかった。


 こうして、俺らのパーティの名前は《RARAL》となった。


 ああ、解散時期が待ち遠しい――。 


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